夏越しの大祓

さて、今年も早いことに、半分が過ぎました。

昔の人は節目というものを今以上に大切にしたようですが、この「一年の半分」という節目にあたっても、さまざまな風習が残っているようです。何気なく地域の広報誌を見ていたら、市内の神社での茅の輪くぐりが紹介されていました。

 

「大祓(おおはらえ)」はこれから半年の無病息災を願う大きなお祓いで、正月と6月30日前後には各地の神社で「茅の輪」と呼ばれる、草で作った巨大な輪が設置されます。茅の輪は蘇民将来の伝説に由来するもので、この茅の輪をくぐると、日々の小さな罪や穢れを祓い、むこう半年を無病息災で過ごせるといいます。

茅の輪くぐりには前から興味があったのですが、都内の有名な神社の茅の輪くぐりにいそいそと出かけてみたものの、あまりの行列にあきらめざるを得なかったこともありました。まさか市内でも茅の輪くぐりをしているところがあるなんて、と俄然行く気になってきます。本来は6月30日に行くものだそうですが、ここではもう少し長い期間やっているそうなので、平日を狙って行ってきました。

 

江戸時代にはかなり栄えていたという印西市・木下(きおろし)の街を車で通り抜けていきます。町並みは寂れてしまったところもありますが、昔のままの狭い道や、ところどころに残る古い看板を掲げたお店などに、なんだか懐かしい雰囲気があります。最初は行き過ぎてしまいましたが、ちょっと戻って小さな川をいくつか超え、車がすれ違えなそうな細い道をおそるおそる抜けて、ようやく神社へ。

 

たどり着いた六軒厳島神社は、住宅街の端にありました。境内のすぐ隣に川が流れていて、川には新しいもののようですが小さな橋がかかっています。そして、神社の裏にはもう水田が!

こじんまりした神社は、鎮守の森がないので余計にがらんとして見えますが、そばを流れる川がどこか懐かしさを感じさせる、雰囲気の良いところでした。

 

お目あての茅の輪は鳥居の向こうに、どーんと設置されていましたが、まずは氏子と思われる方々の案内に従って、人形(ひとがた)を受け取って名前を書き、それから茅の輪くぐりへ。

「はい、ここでまず一礼。そんで、左に回って……ああ、もっと大きく回って!」と、張り切って指導してくださる声に従って、左・右・左とくぐってから本殿へ。体を撫でて、三度息を吹きかけて我が身の穢れを移した人形を預かってもらいました。これは後日お焚き上げをして川に流すようです。

 

それから参拝して初穂料を納め、小さな茅の輪の魔除けを頂いてきました。これはさきほどくぐった茅の輪を小さくしたような形ですが、こちらがもともとの茅の輪のサイズのようです。玄関か神棚に飾るといいそうなので、さっそく玄関に飾りました。

 

ふう、これで満足!と思いきや、もうひとつ残っている風習がありました。これはもともと京都の風習なのだそうですが、この日に「水無月」というお菓子を食べるというのをやってみたかったのです。

問題の「水無月」はちょっと探してもこのあたりには売っていなそうだったので(本気で探せばあるかもしれませんが)、今年は自分で作ってみることにしました。

 

水無月は、外郎(ういろう)生地で出来たお菓子です。ういろうの上に疫病除けの意味を持つ小豆を散らして固めてあります。

実は、ういろうを作るのは初めて。材料は葛粉・白玉粉・小麦粉・砂糖・水だけで、これを混ぜて蒸すのですが、電子レンジでも作れるとわかり、試してみました。8分くらい火が通ったら一度取り出して、煮ておいた小豆を載せて、少し残しておいた生地を回しかけて、さらに加熱。全体に火が通ったら完成!あとは冷ますだけ。拍子抜けするくらい、早く簡単に作ることが出来ました。

 

水無月は、暑気を払う氷に見立てたお菓子だそうで、氷(今のアイスキューブではなく昔の割氷)に似せて、三角形に切って食べます。本物の氷を庶民が夏に手に入れるのが難しかった時代に、宮中行事を真似して作り始めたものだそうですが、なるほど、少し透き通っていて氷のように涼し気です。

茅の輪くぐりをして水無月も食べて……年々暑さが厳しくなる夏ですが、ささやかなおまじないにあやかって、今年は元気に過ごしたいと思います。

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コメント: 3
  • #1

    ボッコちゃん (火曜日, 06 7月 2021 17:41)

    「水無月」という和菓子が手に入らないとあきらめていましたが簡単に作れることがわかりました。茅の輪飾りも近くでいただけて暑い夏を乗り切れるといいですね。

  • #2

    さっちー (月曜日, 02 8月 2021 21:45)

    私も、茅の輪くぐり 7月2日に東京 根津神社で体験して来ました。念願の月次花御札を、大人買い。谷中の穴子が美味しいお寿司屋さんに寄って、ちょいと一杯。日暮里の萩の湯さんで、汗を流し帰路へ。いい 1日でした。

  • #3

    nana (月曜日, 09 8月 2021 10:43)

    ボッコちゃん>>
    水無月、予想外に簡単でした。ですが、あとで教室の生徒さんから「米屋で売ってますよ。うちも買って食べました」とお聞きしました。まさかそんなところにあったとは。

    さっちーさん>>
    なんと通な江戸散歩をしていらっしゃるんでしょう!それはそれは、江戸の風情を満喫なさった一日でしたね。

    根津神社の花御札、素敵ですよね。うちにも6月の御札で竹(笹?)の描いてあるものがひとつありますが、涼しげなので夏の間飾っています。
    根津には年2回くらい、日本画の絵具を買いに行っているのに、そういえば根津神社にはまだ行ったことがありません……今度行ったらぜひ寄って、花御札を買ってみたいです♪