描きかけの小品

先日は久々の大作について書きましたが、その合間に描いていた他の絵についても紹介したいと思います。

 

写真一枚目は、10年ほど前に描き始め、行き詰って放置してあった絵です。

ようやく先に進むヒントが得られて、今少しずつ描き進めています。同じ絵を前にして、あの頃悩んだのとは違うものの見方をしている自分が不思議ですが、何か大きな答えがもらえそうな気がしてドキドキとしながら描いています。

 

写真2枚目も同じころに描き始めたもの。いつもと少し違う表現の回路を使いたくて、同じようなモチーフをデザインっぽく描いてみたものです。イラストか図案のように描くつもりだったのに、つい絵画的になってしまうのに苦笑しながらも、とりあえずは仕上げてみようと思っています。

 

3枚目は以前描いたさくらんぼの小品を、色合いと絵の具の使い方を少し変えて描いてみたもの。

写真はありませんが、他に同じ構図で背景が桃色の絵も描いています。

 

4枚目は、ふと浮かんだイメージを描いてみたものです。闇の中を落ちていくトランプ。

ごくたまに、そういうものが視えたような気がする事があって、絵になりそうなときには描いてみる事があります。

これも長辺20センチくらいの小品ですが、気に入っているので額装しようかと思っています。

 

 

そんな調子で小さな絵をいろいろと描いていると、学生の頃のできごとを思い出します。

クラスメイトの一人が「最近、小さい絵を何枚か並行して描いてるんだけど……」と言ったら、近くにいた面々が一斉に「えーっ!」と叫び、それから口々に「疲れない?」「よくそんなことできるね。」「いちいち切り替えるの大変じゃない?」などと言いだしたのです。私も「そんなこと、できるものなの?」と思っていました。

 

たしかに、一枚の絵を描くのに集中してその世界に向き合っていた直後に、他の絵に手を入れようとすると、頭の中を切り替えるのにものすごい労力を使うものです。

絵画教室を始めたころは、生徒にアドバイスをするために「例えばこうして……」と作品に手を入れるときには、とても疲れました。まずその絵を“取り込む”つもりで、進み具合やバランス、描き方、個人の色彩感覚やクセ、できれば世界観まで、ざっと観察しながら把握するのですが、これだけで頭はフル稼働。それからその絵に合わせた完成形をイメージし、それに沿ってアドバイスを……と数人分こなすと、頭の中がからっぽになったように消耗したものでした。

でもそのうち、“取り込む”のも、本人に成り代わったつもりで絵を見ることにも慣れ、短時間にパッと切り替えて何枚もの絵を見ること(感覚的には”渡り歩く”が近いでしょうか)ができるようになっていました。

 

これが良かったのか、今では自分の絵を並行して描くことは何でもありません。気が付くと5枚くらい描いていたりもします。

もともと日本画は油絵などより乾きが早いとはいえ、乾き待ちの時間に他の絵にかかれるのはやはり便利ですし、時にはいい気分転換にもなります。

でも単純作業や全体の調整の段階ならともかく、もっと絵の世界に深く入り込まなければならないときには、むしろ"頭を切り替えない”ことが大切!

せめて描写の段階に入ったら、その絵だけに心から向き合いたいと思います。

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コメント: 5
  • #1

    凹太 (火曜日, 11 8月 2020 11:27)

    2枚目の絵は確かにいつもと違います。でも落ち着いた中に、明るく、リズムが感じられいい感じです。今は難しいと思いますが、書き溜めてぜひまた展示会を開いてくださいね。トランプの絵はもし花札だったらどんな感じになったかなと空想しています。

  • #2

    ボッコちゃん (金曜日, 14 8月 2020 10:03)

    絵画教室の生徒さんにアドバイスする時にそのかたの世界観を把握して…と言うところに驚きました。そりゃあ疲れるわと思った次第。自分と向き合って絵を描くのとは違う作業がまた自分を拡げていく事になるといいですね。

  • #3

    nana (日曜日, 20 9月 2020 14:28)

    凹太さん>
    2枚目の絵は、リズムは作れたものの、岩絵具の良さが出なかったので、いっそアクリル絵の具の方が楽だったかも? やってみなければわからないこともありますし、勉強になりましたが。
    もっと小品も描きためて、できれば大作も数点仕上げて、ぜひまた展覧会をしたいです♪

    ボッコちゃん>
    絵には描いた人ならではの”ものを見る目”が否応なしに反映されるので、私がアドバイスや手直しする時にも、全く文脈にないものを加えないよう気を遣っています。私の絵にしてしまってもいけません;
    生徒さんの作品でも、色使いなどにハッとしたり「ああ、こういう発想は私になかったな」というものに出会ったりすることがあります。自分の中で美意識を練ることも大切ですが、見慣れぬものや方向の違うものに対しても柔軟でありたいものだなぁ、と思います。

  • #4

    さっちー (木曜日, 24 9月 2020 14:01)

    奈々先生も、ヒンメリ愛好家だったとは、、。とても嬉しい限りです。アヤメの茎も、ダークな色合いで 素敵ですよ。今度、紹介しますね。

  • #5

    nana (月曜日, 28 9月 2020 09:41)

    さっちーさん>
    ヒンメリ愛好家というほどではありませんが、これはハマるとハマってしまいそうですね。自分で形を考えてバリエーションを増やせるのも魅力的です。
    アヤメの茎でも作れるのですね!色合いもどんな風になるのか気になります。ぜひ来年、庭のアヤメで試してみたいです♪