旅日記~洋館めぐり3~

読者の皆様には大変お待たせをいたしまして、申し訳ございません。

かなり間が空いてしまいましたが、久々にブログをアップしたいと思います。

 

神戸の洋館巡りの第三弾、下書きを大半書いて保存しておいたので、時系列としてまずはそれをと思ったのですが……な、なんと文章が消えていました。(ハリー・ポッターの世界ならこんな時、「マーリンの髭!」と叫ぶところです。)

このホームページ作成のシステムが大規模なアップデートをして以来、どうにも使いにくくなり、たまに小さなバグが起こるようになったのですが、今回ばかりは唖然としました。マーリンの髭!

と、気を取り直して新たに書きたいと思います。

 

神戸の洋館は北野地区に集中しており、公開しているものだけでも20館近くあります。中でもちょっと面白かったのがプラトン美術館というところでした。

家が丸ごと装飾美術の博物館のようになっていて、イタリアを中心とした装飾品が、これでもかとばかりに飾られています。あえて追記しますと、この『これでもかとばかりに』という言葉は誇張ではなく、本当にこれでもかとばかりに、所狭しと飾ってあるのです。

調度品のひとつひとつも装飾の全くないものはなく、すべてのものが装飾的。それぞれがぐいぐいと自己主張しているので、空間としては少々濃くて息が詰まるので、全体より細部、一度に一品ずつを鑑賞していくのが正解でしょう。

装飾美術は好きですが、私の趣味よりかなり濃いのは、まあ好みの問題として。家具なども、少しごつく感じるほどの彫りの深さ、くっきりとした曲線と力強い意匠がいかにもイタリアらしい印象です。

 

室内にあふれる装飾品に交じって、有名な画家の素描などもさりげなく飾られています。そしてそういうものを説明してくださるのは、なんと本物の執事さんでした。この家に昔から執事としてお仕えし、ここが美術館となってからはお客さんの案内をしているそうです。執事の制服を着た、本物の執事さんが案内してくれるとは贅沢!

ただし、この館が共通パスの対象ではなく、別に少し高めの入場料を払わないといけなかったり、少し外れたところに建っていたりするせいで、お客さんの流れがこちらにあまり来ないというのが大変遺憾らしく、説明の折々にその愚痴がつい顔を出してしまうのはご愛敬でしょうか。「こんなに素晴らしいのに、素通りするなんて勿体ない」「もっと来て下さるべき」というようなことを何度も聞いた気がします。

 

装飾品は壁や棚にとどまらず、床の一部にモザイクタイルでライオンが作ってあったり、外の通路にもステンドグラスがかざってあったりと、本当に飾れるだけ飾ったとでもいうような様子。

昔は本館にご主人が住まい、離れが使用人の寝泊まりと作業の場だったそうですが、今では本館はすべて展示スペースとなっていて、離れにはご主人が住んでいらっしゃるようです。離れは地下室のみ見学可で、ここはもともと、主人の食事を用意したりした台所なのだとか。ワインセラーもあると執事さんに聞き、さっそく行ってみました。

 

地下室と言っても半地下ですが、それでも少しひんやりとして、冷蔵庫のないころには重宝されていそうです。地下室と聞いて暗いイメージがあったのですが、白い壁のおかげかそれほどでもありません。昔ながらのキッチンの奥に、ガラス窓のついた小部屋があり、布のようなものに包まれたワインの瓶がたくさん見えました。施錠されているのはもちろん、壁や扉の頑丈な造りを見ても、中のワインの貴重さが伝わってくるようです。

 

館を一周した後は、テラスを利用したカフェでティータイムと洒落こみます。今度は本物のメイドさんのご登場!

執事さん同様にこの家にずっとお仕えしているらしいご年配のメイドさんは、制服をまるで体の一部のように、ごくごく自然に着こなしていました。コスプレなどとは次元の違う、例えるなら”夏祭りの夜だけ浴衣を着た女の子”と”茶道の先生”の着物の着こなしの差、みたいなものを感じました。さすがに板についています。

庭にはさまざまな彫刻が置かれていましたが、こちらもやはりコレクションが多すぎて飾る場所がないのか、密度が高め。もし彫刻に自我があったら、パーソナルスペースに関して小言を言いそうです。そんな庭を眺めながら、小さなケーキがいくつか載ったプレートと紅茶を頂きました。

 

メイドさんは母屋のキッチンをフルに活用してスイーツを手作りし、給仕のスタッフに指示を飛ばしているかと思えば、館内をさりげなく巡回し、またいつの間にか門の横の小屋で入場券を販売していたり。本当は二人くらいいるのではないかと思うくらい、あちこちで見かけました。

リュックを持て余した客(つまり私ですが)にも目ざとく気がつき、「良かったらこちらでお預かりしましょうか?」と声をかけて下さるあたり、目配りが行き届いていることに驚きます。

館内を見終わった後でリュックを探したら、庭の休憩スペースのベンチに置いてありました。よく見ると、サテンの白いナプキンがそっとかけてあります。リュックが目立たないようにでしょうか。そのご丁寧な気遣いに脱帽しました。

 

洋館を公開して観光地化しているところでは、その洋館の持つ歴史を「展示」という形で見せるにとどまるところが多いですが、ここでは思いがけず、長年この館に関わってきた使用人の方を通して往時の様子が想像できて面白かったです。

これまで函館、長崎、神戸と古い洋館の残る街を巡ってきましたが、最後はやはり……横浜でしょうか。

近いし、いつでも行けるからと後回しにしてきましたが、横浜の洋館も今度じっくり見て回りたいと思います。

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コメント: 2
  • #1

    ボッコちゃん (土曜日, 21 9月 2019 17:15)

    次は横浜ですか。ニューグランドホテルなどいかがでしょう。マッカーサー(新婚旅行時と終戦時の2回)やチャップリンも泊ったそうですが我らはお茶でもいいかな?ご検討下さい。

  • #2

    凹太 (日曜日, 29 9月 2019 22:23)

    どこかに行って何かを見るものもちろんいいのですが、そこで人と出会い話をするとまた印象深いものですよね。自分もまだ鮮明に覚えている人がいます。次を楽しみにしています。