謹賀新年

このあと、雲に空いた穴から初日の出が見え、すぐまた隠れてしまった
このあと、雲に空いた穴から初日の出が見え、すぐまた隠れてしまった

 明けましておめでとうございます。

 この一年が佳い年となりますよう、心からお祈り申し上げます。

 

去年の個展の後、ずいぶんスケジュールが押してしまい、結局ブログも更新できないまま新年を迎えてしまいました。その間にあった出来事いろいろは、今後少しずつブログで紹介していきます。また、今年こそはもっとマメに更新していきますので、どうぞ宜しくお付き合いのほどを。

 

さて、皆様は元旦をいかがお過ごしでしょうか。

私は今朝、成田空港のすぐそばにある、航空科学博物館へ初日の出を見に行ってきました。私は初めて行きましたが、元旦は展望台から初日の出と初着陸の飛行機を見るというのが、この博物館の恒例イベントなのだそう。元旦だけは朝の5時オープンとのこと。私は最近、飛行機に少し興味を持ったところで、ちょっと調べ物をしている時にたまたまこのイベントを知り、行ってみることに。調べると日の出は6時半くらいだったので、その少し前に着くように出発しようと決めました。

朝5時に起きて支度し、コートにブーツ、手袋、耳あて付き帽子までかぶり、「いざ出発!」と思ったら、なんとフロントガラスに霜がびっしり!

このところ冬の朝に運転する機会がなかったので、霜のことをすっかり忘れていましたが、これでは走れません。きらきらと光る霜の模様は綺麗で、つい観察を始めたくなりましたが、そんなことをしていては確実に初日の出を逃すので、あわててぬるま湯を用意しに部屋に戻りました。なんとか霜を溶かして、車を出します。この時点ですでに予定時間を少しオーバー。初日の出に間に合うでしょうか。

 

霜は溶けても、今日の最低気温はマイナス5度、また凍ろうとするのを暖房で溶かしながら進みます。車の中も冷え切っていてなかなか温まりません。それでも、こうして人気のない真っ暗な街を車で走っていると、なんだか非日常の感じがして冒険心をそそられます。大人になって良かった、運転免許も取って良かった、と思うのはこういう時です。おかげでこうして、ちょっとした冒険ができるのですから。

そういえば、まだ免許を取りたての頃、ある夜突然、無性に夜の海が見たくなったことがありました。「今から行ってしまおうか」とさえ思ったのに、その時は一時間半くらいの距離があまりに遠く、夜の運転も怖くてとても一人でその冒険には出かけられませんでした。どうしてだか湧いてきた「夜の海が見たい」という気持ちを、そのときの私は大事にしたかったのに、あきらめなければならないことが切なかった記憶があります。別に最近は夜の海に飛んでいきたくないけれど、もし同じ気持ちになっても、今ならきっと叶えてあげられるなと思うと、少しばかり胸を張りたい気分になります。

 

成田市街は新勝寺もあるので混んでいるかもと思いましたが、すんなりと通り越し、空港方面へ。だんだん道路が太く、近代的になってきました。飛んでいる飛行機が大きくて、空港に近づいてきた実感が湧いてきます。空が白んできたので焦りますが、運転だけは冷静に。空港を過ぎて少し行き、博物館に着く頃、ちょうど日の出の時間となりました。駐車場はもうほとんどいっぱい。展望台にも人だかりができているのが見えます。こんなに人が集まるイベントだったとは。

 

展望台に到着。日の出の時間は過ぎたのに、太陽はまだ顔を出しません。上空は晴れ渡っているのに、地平線近くに山脈のような雲が広がっていて、その雲に隠れてしまっているのです。おかげで間に合ったものの、ここからが長く、30分以上も待ちました。太陽が高度を上げるのと同じくらいのペースで雲も成長してしまい、太陽が見えないのです。

遅い太陽を待ちながら、空を眺めます。5日目くらいの月を反転させた形の月がまだくっきりと浮かび、星もちらほら見える中に、さらに光の点が見えてきます。だんだんと近づいてきて、機影だとわかるくらいになると、カメラを構える人がちらほら出てきて、もっと近づいてくると大半の人が写真を撮ります。せっかく近づいても、他の滑走路に行ってしまう飛行機もありますが、博物館のすぐ隣の滑走路にも2機の着陸がありました。

 

群衆に向かって、おしくらまんじゅうの参加者を募りたくなるような寒さの中、さらに待ちます。こんなに人がいるけれど、本当に飛行機好きの人はそこまで多くないのではないかと思っていましたが、だんだんとそうでもなさそうに思えてきました。右隣のカップルは、スマートフォンでフライト情報を調べて「シンガポール航空の後はしばらく来ないよ」と確認しています。前にいるおじいさんは、ようやく飛行機らしいとしかわからない大きさの機影を観察して、「あれはジャンボだな」と孫に教えているし、左隣の高校生くらいの男の子はなんだかすごく工学オタクっぽい雰囲気をしている……。うん、このあたりでは私が一番素人かも。やたら詳しそうなおじいさんの話はこちらにはほとんど聞こえないし、口数も多くないけれど、水を向ければいくらでもうんちくが出てくるタイプと見ました。飽きたし寒いしで建物に戻りたがっているお孫さんの代わりに、いっそ私に聞かせてほしいと思いながら、もう少し待ちます。

 

更に何機も見送った後ようやく太陽の光が差してきて、観衆がちょっと沸いたものの、太陽は厚い雲に窓のように空いた穴からしばらく覗いただけで、また雲隠れ。「え、これって初日の出って言えるの?」という困惑があたりに漂います。これで初日の出を見たことにしようか、それともちゃんと顔を全部出すまで待つべきか。ざわざわと相談して迷う声が聞こえる中で、私はもうこれで十分と判断して屋内に戻りました。

博物館はちょうどリニューアルのため工事中で、見られないエリアも多かったですが、引退した小型飛行機の実物が置いてある庭はなかなか壮観。実際にコックピットに座れる飛行機やヘリコプターもあり、小さい子たちが大はしゃぎ。学生の訓練用のもの、朝日新聞の取材に使われたもの、救助に使われたもの、個人所有のもの(大変うらやましい!)など、十数機はあるでしょうか。

私も小型機に入ってみました。昔の飛行機はコックピットもアナログな感じがして親しみが持てます。古びたレバーの感触もなんだか面白い。でも車と同じく、窓には霜がびっちりとついて真っ白、視界はすこぶる悪く、飛べそうな気分にはなれませんでした。残念!

 

もう日が高く昇り、霜の心配もなくなった車を運転して、帰途へ。運転中も車の窓から次々に飛行機が行き来するのが見え、またどこかへ旅に出かけたくなりました。いつも羽田からの方が安いから羽田ばかりだけど、たまには成田から国内線に乗ってみたくなります。

家に帰って、お雑煮を作って食べると、ようやく体が温まりました。冒険を終えて帰ってきたという満足感も、じんわりと心を温めてくれるよう。

振り返ってみると、去年は結局一度しか旅をしていないし、外出さえも少なかったな……。

ならば、今年は旅に出たり、こんなちょっとした遠出をしたり、あるいはいつも読まない分野の本を読んで”知の冒険”をするのでもいい。なんでもいいから、そのときの自分の気持ちを大事に、なるべく冒険をして自分の世界を広げ、感性を刺激できたらいいなと思いました。

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コメント: 3
  • #1

    凹太 (日曜日, 06 1月 2019)

    初日の出は実に神々しく、清々しいものです。今年の決意とお願いをお日様に伝えたくなります。お互いに良い年でありますように。
    こちらでも行きましたが、日本のように寒くなくきりりとしません。手を合わせても、あっ太陽が出てきたと言う感じです。初日の出を見に行くと言うのは日本だけかもしれません。
    暗いうちに出かける、知らないところにいくと言うのは非日常でわくわくします。飛行機でも車でも、歩いてでも小さな冒険を楽しんでください。

  • #2

    ボッコちゃん (日曜日, 06 1月 2019 23:11)

    なかなか素敵な元旦♪。航空科学博物館は両親と旅行した時最後にちょっと寄った場所でしたが父は古い飛行機を懐かしがり、飛行機大好きな母はまじかに見える飛行機に大喜びで思いのほか受けました。空港近くになると飛び立たったばかりの飛行機の底の部分が目に迫ってきます。あんなに重い物体がよく飛ぶなあといつも関心します。上野の科学博物館で飛行機の歴史の映像を見たことがあるけどライト兄弟に行きつくまでの数々の失敗の映像が印象的でした。空を飛びたいという人間の執念を感じました。元旦からワクワクする体験。今年もたくさんの大きなワクワク小さなワクワクをキャッチしてこころ豊かな年でありますように。

  • #3

    nana (月曜日, 25 2月 2019 13:51)

    凹太さん>> そちらでは赤道が近く、ほぼ真上に太陽が昇っていく感じですし、ずいぶん趣がちがいますよね。それに日本で太陽をとりわけ神聖視するのは、神道の最高神が天照大神だからというのもあるのかもしれません。

    ボッコちゃん>> 人が抱く「空を飛びたい」という執念にはすごいものがありますよね。塔から手作りの翼で飛び立って墜落してもあきらめないとか、投石器を改良して犬を飛ばしたりとか、現代人の感覚ではぞっとするものも……。
    はい、今年はもっとワクワクできるものに飛び込んでいきたいと思います♪お二人にも良い年でありますように。