襖絵の制作(前編)

襖絵を描きに八戸へ行ってきました!現場である友人の新居は内装が終わり、見学会が開かれている最中でしたが、お客さんがいらしても描いていて構わないとのこと。四泊五日の日程なので、その中で描き切れるかが勝負です。

 

数泊の旅なら、たいていリュックか肩掛けカバンひとつで出かけてしまう私ですが、今回は大荷物。絵具だけでも重箱3段と少し、刷毛や筆いろいろ、絵皿10枚くらい、絵具用の乳鉢、スケッチブック2冊などをスーツケースに詰めて、いざ出発!

 

八戸には昼すぎに着き、夕方まで依頼主である友人と下図を並べて配置決めをしました。大きさや位置をランダムにして、シャボン玉のように散らすことは決まっていましたが、あとは実際のふすまを見てみないと決めがたかったので、とりあえず下図は同じ大きさ(直径25センチくらい)で用意。季節ごとに分けて、配置やどの花を大きく描くべきかなどを話し合って決めていきました。

おおまかなところまで決めただけで、あっという間に夕方に。友人宅へ行き、保育園から戻ったお嬢さんと一緒に遊び、南部せんべいが入った「せんべい汁」をご馳走になりました。宿(温泉でした)へ帰るとくたくたで、少し下図を手直ししただけで眠り込んでしまいました。これでは四日で描き切れるだろうかと心配になります。

 

バスもあるのですが、知らない街に滞在するときは歩き回って地理を確かめたいので、翌朝は宿から現場まで歩いてみました。現場は駅から近いのですが、宿は街はずれの方なので40分弱かかります。運動不足解消にはちょうどいい距離です。歩道がないところもありますが、さすが地方というべきか道自体が広いので怖くはありません。関東ではとっくに咲いている花がこちらではまだ芽吹いたばかりなのを見ると、「東北に来ているんだなぁ」と実感。ほかにも関東にない植物がないかなど探しながら歩いていきます。スーパーにも寄り、その土地ならではの食材やお惣菜、お菓子などを軽く見て回り、お昼ご飯を買いました。

現場に着くと、鍵が開いていて、工務店の方と見学者がいらしてました。平日は見学者はほとんどいないと聞いていたのでびっくり。挨拶をし、音を立てないよう気を付けながら作業を始めます。

 

襖は普通の和紙でなく、丈夫さを優先して選んだので、寒冷紗のような質感でした。そのままでは絵の具がのらないので、方解末(方解石の粉でできた日本画の絵具)を膠で練り、表面の粗い目の中に塗り込んでいきます。一度では済まず、かなり濃いものを3回塗り重ねてようやく平滑な面を作ることができました。大きな円や小さな円をランダムに(というよりランダムに見えるように計算しながら、ですが)散らし、その円に合うように縮小・拡大コピーした下図をのせて写していきます。

この作業にかなり時間を取られてしまい、今後の進度が早くも心配になってきました。これは巻いていかないと!

 

二日目からは、朝ごはんを食べてから歩いて出かけ、休憩をはさみながら夜まで描き、また歩いて帰って(最終バスが16時半と早すぎたので)、夕食をとり温泉に入って就寝というパターンに。ストイックではありますが、描けばそれだけ絵が進んでいくのは楽しいし、それで疲れても心地よい疲れなので苦になりません。

 

友人は何かと私の食事を気にしてくれましたが、私からすれば、普段はお惣菜と無縁なせいで、こうしてスーパーで食べ物を調達するのがかえって楽しいくらいでした。

青森といえばリンゴか南部せんべいくらいしか知りませんでしたが、クルミの産地でもあるらしく、クルミを使った料理やお菓子も美味しいことを知りました。スーパーで何の気なしに買ったくるみゆべしも予想外の美味しさでしたし、クルミをすりつぶして甘くしたものを塗ったお団子は特に気に入りました。

また、友人が八戸の郷土料理だという、ウニの卵とじをのせたごはんを差し入れてくれたりもしました。テレビで紹介されたとき、「ウニは生が一番なのに、火を通して卵とじなんて!」と他県の人たちから非難ごうごうだったらしいですが、ウニから染み出した海の味が卵によく合い、これはこれでとてもおいしいと思いました。

 

温泉には毎晩入りましたが、八戸の温泉は少し塩気があり、バスソルトを使ったかのように肌がすべすべになるし、ぬるめなので長湯にはもってこいでした。地元の人たちがマイお風呂セット(プラスチックのかごにボトルのシャンプーなどを詰めたもの)を持って通っていて、自宅のお風呂のようにすっかりくつろいでいる様子もちょっとしたカルチャーショックでしたが、面白かったです。  (後編へつづく)

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コメント: 2
  • #1

    凹太 (月曜日, 04 6月 2018 23:10)

    青森は温泉が多く、宿泊者以外にも使えるところが多く、近くの人がお風呂セットを持って来ています。本当にくつろいでいます。そうです、肌がすべすべになり、毎日こんな贅沢をしているのかと羨ましくなります。せんべい汁も美味しいですが、町の食堂で魚を食べてもいいところです。鯖とイカがお勧めです。食べましたか。畑を見ると都市近郊のようにいろいろなものを作っていました。もしかしたら夏に冷たい湿った風が入る山背の被害を少なくするためかな。

  • #2

    Nana (水曜日, 13 6月 2018 18:22)

    焼いた鯖とイカのお刺身は、宿の朝ごはんに必ず出てきたので何度も食べることができました。イカは甘かったです。
    街の食堂にも行ってみたかったですが、八食センターに行ってみる余裕さえなくて残念でした。でも、いつかまた八戸に行くことがあれば、地元の方が行くようなお店で、おいしいお魚を食べたいです。