クリスマスコンサート

去り際に撮った一枚。オルガン以外に装飾なし。 環状の照明も面白い。
去り際に撮った一枚。オルガン以外に装飾なし。 環状の照明も面白い。

本格的な冬の寒さがやってきました。庭も菊の花が少し残っているくらいで、すっかり寂しく風景になりました。柚子やレモンが実っている姿だけが輝いて見えます。来年はもう少し常緑の植物や冬に咲く花をうまく取り入れて、冬でももっと楽しめる庭にしてみたいものです。

 

あれやこれやと忙しくしているうちに、あっという間に12月が来ていて呆然としてしまいます。もうクリスマスも近づいてきました。

でも、この時期ならではの楽しみもたくさんあります。クリスマスが近づくと、まずはツリーを飾り、クリスマスのお菓子を焼きますが、そのお供にはクリスマスキャロルが欠かせません。どういうわけか、こどもの頃から「いっそ一年中聴いていてもいいかもしれない」と思うくらいクリスマスキャロルが好きなのです。そして、これまたどういうわけかパイプオルガンの音色も好きで、普段からときどき無性に生演奏を聴きたくなります。そういうわけで「キャロルとパイプオルガンの両方が聴けるいい機会」として、一昨日、東京基督教大学のクリスマスコンサートに行ってきました。

 

市内にあり、ときどきこのような一般の人でも気軽に聴けるコンサートを開催しているので、こどもの頃から数えるともう何度来ているかわからないくらい来ていますが、いつ来ても会場はいい雰囲気です。コンサートはチャペルの中で行われ、教会らしい長いベンチに座って聴くのですが、座席がひとつひとつ区切られた普通のコンサートホールと違って会場に一体感があり、なんとなくアットホームに感じます。チャペルはドームをいくつかつなげたような形をしていて、外から見ると灰色っぽい外観ですが、内側は天井まで白く塗られ、窓が天井近くまで大きくとられた開放的な造りになっています。

出口の上のステンドグラスは抽象的なデザインで、またチャペル内の大きな十字架も磔刑像などの装飾が一切なく、チャペル内で装飾的な要素といえばパイプオルガンについている唐草の飾りくらいのものです。やはりプロテスタントの教会だからなのでしょうか。美術史の本などでカトリックの教会の写真を見慣れているせいか、少し物足りないようにも感じてしまいますが、これはこれで無駄がなく、知的でモダンな印象が斬新です。センスがいいなと思って見ていましたが、今回の理事長のあいさつを聞いて初めて磯崎新氏の設計だと知りました。「なるほど、やっぱり一流建築家の仕事だったのか」と、今更ながら納得。何度も来ていたのに全く知りませんでした。

 

プログラムは教会音楽を担当している教員の方々のピアノや声楽、パイプオルガンの他、有志の生徒によるトーンチャイム(手で持って振ることでハンマーが動き、鉄琴のような音がする楽器。ハンドベルのように、ひとつの楽器が一音を出すので、両手を使って一人で二音まで担当できる)の演奏とクワイヤ(聖歌隊)によるクリスマスキャロルなどが続きます。

何度も来ているだけあって、「そうそう、この先生はこういう人だったな。相変わらずアツいなあ」などと音楽以外の部分でも楽しみながら聴いていました。

先生方の演奏もいいですが、やっぱりクワイヤのクリスマスキャロルになると会場が盛り上がりました。『さやかに星はきらめき』など数曲を聴いたあと、最後は観客も一緒に讃美歌を歌います。今回は誰でも知っている曲(『神の御子は』と『きよしこの夜』)なので、楽譜はなく歌詞のみがプログラムに印刷されていましたが、有名な曲だけあってクリスチャンでない方々も自信をもって歌っている様子。でもそこここから聞こえてくる、いかにも歌いなれたような伸びやかな歌声はやはりクリスチャンの方のものでしょうか。

なんにせよ、パイプオルガンの伴奏(!)で讃美歌を歌えるなんて、なんという贅沢でしょう。とても豊かな心地になります。

それに、こうして美しい音楽をともに楽しんでいるときは、クリスチャンでも無宗教でも何でも関係なく、一体となれるというのは素晴らしいことだと思います。音楽の力を感じました。

 

コンサートが終わるとまた開催者側のあいさつがありましたが、このようなコンサートがあるたびに2000本もパイプがあるこのパイプオルガンを調律してもらっており、かなりの維持費がかかるとのこと。出口に募金箱があったので、もちろん募金をしました。これからもぜひとも続けてくださいという気持ちを込めて!

 

会場を出ると、クワイヤのメンバーがずらりと並び、クリスマスキャロルをお見送りに歌ってくれていました。ステージよりずっと近くで聴けるので迫力があり、お客さんも喜んで聴き入っているので足も止まってしまっていましたが、嬉しいサプライズでした。

星空の下、寒さに肩をすくめながら駐車場に向かっていると、同じように歩いている人たちがキャロルを口ずさんでいるのがあちこちから聞こえてきました。女性の声があり男性の声があり、若い人の声ももっとお年を召した声もあります。別に大きな声ではないけれど、楽しさや幸せな気分をそのままメロディにのせたような陽気な歌声を聴いていると、「音楽って本当にいいものだな」としみじみ思いました。

生きているだけでも、忙しさや痛ましい報道などに触れるにつけ、知らず知らずに傷ついたり心をすさませてしまったりしているものですが、この夜は人間のあたたかい一面を見た気がして、私の心まであたたかくなりました。

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コメント: 3
  • #1

    ボッコちゃん (月曜日, 18 12月 2017 04:13)

    このチャペルが出来た時(25年以上前?)この大学の先生の奥様から設計は磯崎新さんだと伺い大変驚いた事を思い出しました。校舎はそんなに凝ったものではなかった(簡素と言う言い方も出来ます)ように思っていたのでそのアンバランス(金額的な)に驚いたのだと思います。風向きによってはチャペルの鐘の音が聞こえて心地良かったです。ここで開かれたコンサートでは色々思い出がありますが「増えすぎた黒い羊をどなたかもらってくれませんか。ただし食べないかた」と大学関係者のお願いがあり、外国の絵本に良く出てくる黒い羊を見てみたいと思ってキャンパスを探したけどわからなかった事です。ホールもそこで聞くパイプオルガンも好きです。なんか爽やかな気持ちになって帰れるのが良いね。

  • #2

    凹太 (土曜日, 23 12月 2017 02:09)

    チャペルでクリスマスチャペルとは素敵ですね。こちらの教会では日本でなじみのある曲もありますが、多くはギターで伴奏するリズミカルな曲で、手拍子や腰を振りながら歌う人もいます。また、子供たちが小さかったころ、カセットでクリスマスキャロルを繰り返し聴きながら寒い山中湖に行った事を思い出しました。今ではカセットは無いでしょうが、もう一度あのときの曲を聴いてみたいと思います。

  • #3

    Nana (木曜日, 04 1月 2018 02:21)

    ボッコちゃん>> あら、設計者をご存じだったのですね。あとで磯崎氏の他の作品を調べてみたら、外観の雰囲気がよく似た建築もあり、もっと建築に詳しければ一目で見抜けただろうにと悔しくなりました。建築史の授業は西洋・東洋ともに取りたかったけれども、時間割がうまく合わなくて取れず、残念でした。いつか自習したいです。

    凹太さん>> キャロルと言っても、お国柄が出ていて全然違うのが面白いですね。腰を振りながらノリノリで歌ったり踊ったりするなんて、日本なら不謹慎だと言われそうですが。