案山子(かかし)

この春から、手賀沼近辺の里山の保全活動をしている団体が開催している、有機農法の教室に行っています。春から冬までの期間で、月に何度かの土曜日、その日に来られるメンバーだけで和気藹々と活動しています。

仕事の気分転換として週末の農業を楽しみにしている方や、ご夫婦で参加している方、老後の趣味にして熱心に取り組んでいる方など、いろいろな方がいらっしゃいます。

実のところ、私はすでに何年も前から庭で野菜を作っていますし、有機農法よりも別の事に興味があって、この教室に参加しているのですが(そのあたりのことはまたいつか別の機会に語るとします)、収穫したものを山分けして持って帰れるの嬉しいですし、ときどきは収穫したものを料理してみんなで昼食をともにするようなイベントもあります。

 

春には田植えを体験しました。ちなみに、ここでは冬の間も田んぼの水を張ったままにして生態系を豊かに保とうという「冬水田んぼ」にしています。そこに、みんなで種もみを播いて育てた苗を、横一列にずらっと並んで植え付けていったのでした。ときどき、長靴が泥にはまって抜けなくなって転ぶ人が出たり、その日だけ参加している子供たちもたくさんいて賑やかでした。

そのとき植え付けた稲ももうずいぶん背が高くなりました。そこで、毎年恒例だという案山子を作るイベントがやってきました。

 

ふだんは4つのチームに分かれて活動しているのですが、この日はチームで2体の案山子を作るようにとのお達しで、チーム内で作業を分担。私は初めてなので勝手がわかりませんが、何年もこの教室に参加しているベテランの方々がアイディアを持ち寄って方向性を決めてくれました。先に古着などを集めていたので、そういうものを材料にして適当に作っていくのかと思っていたら、ちゃんと作る予定のキャラクターにぴったりの材料を用意してきていたりするので驚きました。ほかのチームでは、キャラクターの顔部分を作るのに、発泡スチロールの切り貼りと着色まで済ませたパーツを持参していてびっくりしました。なんとまあ、気合が入っていること!

 

竹を十字に縛って固定し、パッキングや布を巻いて肉付けして古着を着せ、頭部を作って載せれば、案山子ができます。もっと簡単に作るなら、肉付けせずに十字にした棒に古シャツを着せて帽子でもかぶせるだけでも案山子にはなると思うのですが、どのグループも結構熱が入っていて、有名なキャラクターからテレビや新聞で騒がれている「時の人」まで、いろいろな案山子を作っていました。例年、時間内で終わらず居残る組が出るというのも、わかる気がします。

 

私のチームは、ドラえもんと、ジブリのアニメ『ハウルの動く城』にでてくる案山子のふたつを作ることに。

ドラえもんは発案者が持参してくださった青い布を身体に巻き、フェルトで顔などの細かいパーツを作り、首に鈴をつけて完成。完成した姿を見ていると、いっそのこと、どら焼きも作って、おなかのポケットからちらりとのぞかせたくなりますが、さすがにそこまで凝るのはやめました。顔を作った方が慎重にパーツを切り貼りしてくれたので、顔もよく似ています。

 

ハウルの案山子の方は、なるべくスーツらしく見えそうな古着を選んで着せ、キラキラのボタンを縫い付け、パイプは竹で、大きなシルクハットは麦わら帽子を改造して作りました。

アニメ版では愛嬌のある案山子ですが、原作(『魔法使いハウルと火の悪魔』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著)では腐りかけの大きなカブを頭にした、もっと不気味な案山子だったような。悪い魔女によって王子の魂を入れられたその案山子は、無自覚に言霊を使っているソフィーに魔法を解いてもらいたくて、ずっとケンケン足でついてきていたんだっけ……アニメ版よりずっと複雑でわくわくする、ジョーンズの作品を読み直したくなります。

個性豊かで複雑な事情を抱えた登場人物たちが集まっているだけでも大変なのに、さらに外的要因によって状況がめちゃくちゃになり、収拾がつかなそうになるのに、ラストにはそれぞれの始末がついて、大団円のハッピーエンド!!……ジョーンズはそんな作品を書く、ファンタジー界の大御所です。アニメにするにはどうしても削らざるえかったのでしょうが、原作者のファンとしては物足りなかったな、などと考えながら帽子を頭に縫い付けるのを手伝ううちに、頭の中では「近いうちに再読したい本リスト」にこの本がひそかに書き加えられました。

 

出来上がった案山子を担いで、田んぼへ。地面に埋め込んだパイプに案山子を差し込み、固定して完成!田んぼの緑一色の中に、色とりどりの案山子たちが目立ちます。一般にも参加者を募って案山子を作ってもらったので、案山子はずらりと並んでいます。鳥をよけるだけならこんなにたくさん要らないのかもしれませんが、それはそれ。キャラクターものから、稀勢の里、今話題の若き将棋名人の藤井くんまで並んでいる光景も面白いものです。来月の稲刈りまで、風雨に負けず、ちゃんと立っていてくれることを願って。稲刈りが楽しみです。

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コメント: 3
  • #1

    ボッコちゃん (土曜日, 02 9月 2017 23:23)

    案山子の歌があります(さだまさしのではなく文部省唱歌)。「山田のなかの一本足の案山子~」で始まります。この歌を知っている人は歳がバレるかな?この歌が差別につながると言われているようです。案山子の事を言っているのに差別なのかなぁ。日本は何でも厳しいね。こちらの人はゆる~いよ。なんでもゆる~いよ。カールおじさんみたいな感じ。

  • #2

    凹太 (日曜日, 22 10月 2017 12:00)

    案山子、楽しそうでいいですね。山田のかかしという童謡がありましたが、案山子を少し馬鹿にしているようで気になったことを思い出しました。うろ覚えなので調べてみました。天氣のよいのに 蓑笠着けて 朝から晩まで ただ立ちどほし。 歩けないのか、弓矢で威して 力んで居れど 山では烏が かあかと笑ふ 耳が無いのか 山田の案山子 という歌詞でした。悪気は無いかもしれないがちょっとまずいのではと思いました。関係ない話で失礼しました。

  • #3

    Nana (日曜日, 17 12月 2017 20:36)

    ボッコちゃん:どこが差別なのか、ちょっと思いつきませんが??考えすぎると、なんにでも差別だとかいいがかりをつけることができる気も…。できればもう少し日本もおおらかになりたいものです。

    凹太さん:宮沢賢治の童話にも馬鹿にされすぎていてかわいそうな登場人物がたまに出てきますよ。馬鹿ではなく、むしろ一人だけ本当のことを言っているのに、芥子の花たちに「ばかでのっぽのせいたかひのき」とかなんとか罵られているヒノキがかわいそうでした。