今年はゆすらうめが400グラムほど収穫できました。
ゆすらうめは、桜に似た小さな花を咲かせる木で、初夏にさくらんぼのような実をつけます。実はさくらんぼより小ぶりで、甘さもかなり控えめ。さくらんぼのような軸はなく、実が枝に直接つくという点は違いますが、味は「甘さ控えめのさくらんぼ」とでも例えればわかりやすそうです。
皮が薄くて傷みやすいのと、味もさくらんぼほどはっきりしていないせいか、お店には出回っていませんが、赤い実の美しいこと!まるでルビーのよう。
ゆすらうめは、さくらんぼより小さな実なのに、種が一粒入っているので、果肉はそう多くありません。ざっと煮てから裏ごして、種を除いてジャムにしたこともありましたが、けっこう手間がかかりました。そこで今年はサワードリンクにすることに。
洗ったゆすらうめを大きなビンに入れ、酢と砂糖に漬け込むだけ。とても簡単で、展示準備の合間にささっと作れてしまいました。10日ほどしたら、実を引き上げて完成!
赤い色が美しく、薄めるのがもったいない気がしてきますが、このまま飲んだら酢がきつくてむせること間違いなし。水や炭酸水で薄めて飲みます。
甘酸っぱく、さくらんぼのような後味がふんわり。酢はまだ少し角がある味ですが、もうすこし寝かせておけばもっと馴染んできそうです。
実は、ゆすらうめのドリンクには昔から憧れがありました。
意外とご存じない方が多いのですが、ジブリのアニメ『魔女の宅急便』には、角野栄子さんによる原作があります。その中に、魔女のキキが、あるおばあさんの家でゆすらうめのジュースをふるまわれる場面が出てくるのです。
読んだ時、「ゆすらうめって何だろう?」と思いましたが、とにかく赤くて美しくて美味しそうな飲み物の印象が残りました。そして何年もしてから苗を見つけて喜んで買い、数年は鉢植えで、それからまた数年は地植えにして育ててきたのでした。
ぐりとぐらのカステラ、ナルニア国でエドマンドが食べてとりこになるプティング、ちびくろさんぼの天井まで届きそうに積み上げたホットケーキ、『ぼくは王さま』の卵料理……。
児童文学に出てくる料理やお菓子などが、とびきり美味しそうに思えるのは何故なのでしょう。
本の中に出てくる謎の料理やごちそうを、ただ想像することしかできなかった子供のころとは違い、大人となった今では、その料理にどこかのレストランで出会うこともあれば、レシピを探して自分で作ってしまうことだってできます。
「そう考えると、大人になるのもなかなかいいものだなぁ!」と、ひとりごちながら、グラス一杯のゆすらうめサワーを満喫しました。
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ボッコちゃん (水曜日, 13 7月 2016 00:20)
小説の紹介などで「食べ物の描写が美味しそうで・・・」なんて書いてあるとついついひかれてしまいます。ゆすら梅のサワードリンクで夏を乗り切って下さい。Salud!(乾杯)
凹太 (水曜日, 13 7月 2016 10:57)
自分が子供のころ近所に小さな桜があるのを見つけて、名前を植物図鑑で探したらウスラウメでした。小さなきれいな実も内緒で試食しました。かわいいけどそれほど甘くないという印象でした。さぞかしサワーはきれいな色でしょう。こういう小さな楽しみは「幸せ」です。これに香りでもあれば最高ですが。こちら側はラム酒で乾杯しましょう。
nana (日曜日, 17 7月 2016 14:50)
ボッコちゃん>> 美味しそうというならヘレン・マクロイの短編に出てくるパンの描写のなんと美味しそうだったこと。禁じられて手に入らなくなっただけで、ただの「パンを食べる」という行為があれだけ危険で甘美な体験になるとは・・・。まさに禁断の味。
凹太さん>> たしかに、「かわいいけど甘くない」ですね。香りもないのも本当です。
でもそれが帳消しになるほどかわいいので、私に言わせれば、「甘くないけど、かわいい」です。
サワーは色も綺麗ですし、砂糖で甘さを補ったので、もはやサクランボのようですよ。