季節のハガキ絵

すっかり春となりました。暖かくなったと思って油断すると肌寒い日もあり、風も雨もあります。しかし庭の緑は一雨ごとに驚くほどの速さで濃くなっていきます。

この間まで日が差していたところも、今はもう立派な木陰に早変わり。冬の間、家の中に取り込んでいた鉢植えも出してやり、少しずつ日光に慣れさせているところです。

 

 

 

さて、私が講師をしておりますハガキ絵サークルでは、モチーフも私が選ぶことになっています。

「なるべく季節感があり、楽しみながら描けるものを」と、毎回あれこれと考えながらモチーフを選んでいますが、4月の第一回目は、いちごを描きました。

(※上の画像は2点とも私が描いた参考作品です)

 

いちごのツヤや種を簡単に塗り残すために、今回はマスキングインクを使ってみました。使ったことがある方もない方もいらっしゃったので、使い方も簡単に説明しました。

 

マスキングインク(あるいはマスケットインキ)はゴムを液状にしたような画材で、白抜きしたいところに塗るとゴムの膜ができ、上から絵の具を塗っても染みません。

白抜きしたい部分をインクで覆ったまま、果肉の部分に何色かの赤を塗り、乾いてから専用の消しゴムでゴムをはがすと、ツヤと種だけが真っ白に残っています…!(これだけで歓声があがりました)

あとは種に黄色や黄土色を塗り、全体を整えて、完成!

もちろん、せっせと筆で白く塗り残しても描けますが、細かい塗り残しが手早くきれいにできるので、こんな画材も使えた方が便利だと思います。(ああ、日本画の和紙でも使えたらもっといいのに…。)

 

描いている間、部屋中がいちごの香りに包まれました。「先生、ひとつ食べたらもっとうまく描けそうなんだけど!」なんておっしゃる方もいて、始終にぎやかでした。

 

 

第二回目は、アサリを描きました。

メンバーの一人が「皆と描こうと思って。」と、アサリの殻をたくさん持ってきてくださったので、ありがたく使わせてもらうことにしたのです。

 

よく見ると、アサリの殻がどれも中身が入っているかのように閉じています。

「普通、食べ終わったアサリって、殻が開いてるよね?」「どうやったんだろう?」と、皆さん不思議がっているご様子。代表して私がお尋ねしてみると、なんと「セメダインでくっつけたんだよ。」とのお答え。

何でも、いくつかのアサリはそのままそっと指で閉じたらきれいに閉まったが、たいていのアサリは割れてしまうのでセメダインでくっつけたのだとか。「なーんだ!」と一同破顔一笑。

 

アサリは単純そうかもしれませんが、よく観察すると、意外に複雑な形と模様をしています。

こういうモチーフは模様にばかり目が行き、形や量感の把握は置いて行かれがちなもの。着彩に入っても、まずは「白一色の貝だとしたら」という目で見て、先に貝の陰影をつけ、立体感が出たところで模様を描き込むようにと指導しました。

 

色合い、グラデーション、ギザギザ模様、斑点、茶虎の猫のような縞模様……アサリにはふたつと同じ模様がなく、観察して描いているうちにそれぞれに親しみを覚えてきます。

また、腐る心配がないので、時間内に完成できなくても、家でいつでも続きができる点も良かったようでした。

 

いつも、モチーフは野菜、果物、花が多いですが、夏には貝殻とガラスを組み合わせた涼しげなモチーフも計画中。アサリで学んだこともまた生きるといいなと思っています。

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コメント: 3
  • #1

    ボッコちゃん (月曜日, 02 5月 2016 22:44)

    マスキングインク初めて知りました。便利なものがあるのですね。絵を見ていたらイチゴのショートケーキとアサリのパスタが食べたくなりました(ないものねだり?)。子供の頃は学校から歩いて潮干狩りに行きアサリを取りました。今は団地がズラーッと建っています。

  • #2

    凹太 (火曜日, 03 5月 2016 08:35)

    マスキングインクは面白そう。イチゴがとても甘そうに見えました。和紙ではどうして使えないのでしょうか。胡粉でも加えたら使えるようになるとかないのでしょうかね。「実験」して見たら面白そうです。学生の時に美術の授業で写生をしていましたが、ふと思いついて数種の色の違う葉をつぶして絵具として使ってみたことがありました。不思議な色が出ましたが、見回りに来た先生は遊んでいると思い、馬鹿にしたような顔をしました。何事もやってみなければいいかどうか判らないのに。

  • #3

    nana (木曜日, 05 5月 2016 23:17)

    ボッコちゃん>> マスキングインクは固まりやすく、扱いもちょっと面倒ですが、使うと便利なこともあります。慣れればきっともっと楽しいはず?  アサリのパスタ、食べさせてあげたいです。そちらにはないものね…。

    凹太さん>> 和紙は繊維が長く、表面がけば立っているので、マスキングインクをはがすときに紙を痛めると思います。(考えただけでもぞっとします)わざと荒い絵の具をあつく塗って、あとから削り落とすという画家を知っていますが、マスキングインクそのままを使うのは難しそうです。今度代わりの方法を考えてみたいと思います。
    理解のない先生で残念でしたね。私なら面白がって、それから変色の心配だけします(笑)一生懸命やっていることと独創性を評価して、5をあげちゃうわ!