制作の途中経過 (下図・下塗り)

たまにはお仕事の話でも書いてみようかと思います。

 

いま、千葉市のイタリアンレストランに納品する絵を描いています。

初めは1×3mの大きな絵を一枚というご注文で、百花図(さまざまな花を取り合わせて描いた日本画)などを参考にして、小さな下図まで描いたのですが、お店のご都合で、F10号(53×45.5㎝)を3枚に変更になりました。額を特注しなくて済むのはいいかもしれませんが、大きな絵もぜひ挑戦してみたいものでした。しかし3点並べたときに映えるように絵を描くのも、とても勉強になりそうです。

 

いろんな食材を入れて美味しそうに描いてほしいというご依頼で、一枚目は夏野菜を中心に、二枚目は秋野菜なども入れて、三枚目は魚介ということに。

 

背景は美味しそうに見えるよう淡い黄色を基調とし、夏野菜の絵では夏の光を、秋野菜の絵では秋の午後を思わせる色使いで描くことにしました。

 

問題は魚介の絵です。『食材図鑑』という分厚い図鑑を古本屋で見つけ、一般的な魚の図鑑と照らし合わせながら魚介類を描きだしていきましたが、美味しそうに描くのは予想以上に難しいということがわかってきました。

というのも、あまり写実的に描くとグロテスクになりかねず、「美味しそう!」と思わせるどころか食欲を失わせかねないと気が付いたからです。例えばワタリガニなど、ゆでる前は緑色をしているし、ロブスターも赤黒くて足が多くて、美味しそうというよりむしろ怖い。かといって、ゆでて美味しそうに赤くなったところを描くわけにもいかないし……。あまり写実的にはせず、少しデフォルメすることと、ものによっては生のままでも美味しく見えそうな魚に変えることを決めました。

この絵の背景は他の2点と合わせても浮かないよう、基調の色はおなじにしながらも、ほんのりと海の青さを感じさせたくて、青い影をつけています。これからもう少しこの影の青は考える必要がありそうですが。

 

 

 

イメージが決まらず悩んだりして思うように進まず、悶々とすることが多かったですが、やっとイメージも固まってきたし、暖かくなったので膠(日本画で使う接着剤)が扱いやすくなり、大型連休もやってきて時間もでき、ようやく本格的に追い上げにかかれそうです。

 

(うじうじとしていたら、心の中になぜかいた武家らしいご老人に一蹴されました。

「逃げて仕上がるなら世話はないが、そうはゆくまい。腹を据えて、かかれ、かかれ!」

……どういうわけだか、時代小説を読んでしばらくは武家言葉が離れません。)

 

また途中経過をここでお見せしていくつもりなので、どうぞよしなに。

 

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コメント: 3
  • #1

    ボッコちゃん (月曜日, 02 5月 2016 22:51)

    よくこの絵を描くのに何時間くらいかかりましたかと聞かれていますが、構想に多くの時間がかかるのがよくわかります。イメージが固まると精神的には楽になりますね。追い上げ頑張って!

  • #2

    凹太 (火曜日, 03 5月 2016 08:22)

    確かに魚介類は美味しそうに書くのは難しそうですが、そうなるようにチャレンジしてください。また、途中経過を公開しているのはあまり例がないような気がします。次の途中経過を楽しみにしています‼

  • #3

    nana (木曜日, 05 5月 2016 23:02)

    ボッコちゃん>> もっと早く構想を練り上げられるようにならなければいけない、とずっと思っているのですが、なかなかそうはなれなくって。イメージソースになるような雑誌の切り抜き類もそろそろきちんとファイリングしてやろうと思っています。センスも磨かねば。

    凹太さん>> たしかに途中経過を後悔するのは珍しいかもしれませんね。自分用には写真を撮ることもあったのですが。なるべく、数日おきに公開できるようにするつもりです。何を考えて描いてるかも書いていくので、お楽しみいただけるかと。