神田散策

戦利品の一部♪ 安野光雅の絵本など
戦利品の一部♪ 安野光雅の絵本など

だいぶブログの更新が空いてしまいましたので、少し古い内容になってしまいますが、先月出かけた神田のことなど書きたいと思います。

 

お出かけの行き先が神田になったきっかけは、あるお蕎麦屋さんが家で話題に上ったことでした。

それは神田にある『藪蕎麦(やぶそば)』という、明治13年(1880年)創業の老舗。本当なのかはわかりませんが、昔はやぶに覆われるようにして店があったため、そんな名前がついたのだとか。池波正太郎などの食通が通った店としても有名です。

 

初めて行った時には、門から店舗までの短い間にも手入れされた竹が植えられており、たしか待合なども設けられていました。

中に入ると、帳場から女将さんの「いらっしゃいまし~」「ありがとう存じます~」という声が聞こえてくるのですが、これがまたいい声!長唄かなにかのように良く通るのでびっくりしました。

常連らしいおじいさまたちが卵焼きや穴子、蕎麦寿司などをつまみにお酒を飲み、さっとお蕎麦をすする様子もなかなか粋で、こちらも美味しいお蕎麦を頂きながら、さりげなく観察させてもらったことも思い出します。古くて小さいけれど、下町らしいこざっぱりした佇まいで、老舗の意気を感じさせるお店でした。

ところが数年前に漏電で焼けてしまったことが新聞に載っていて、本当に驚きました。その後、同じ場所で営業を始めたことも知り、また行こうと思いつつそのままになっていたので、「久しぶりに行ってみようか」となり、出かけたのでした。

 

まずは御茶ノ水に着き、神田明神にお参り。高3の頃は御茶ノ水にある美術予備校に通っていたのに一度も足を向けたことがなく、実は初めて来ました。お参りのあと、鳥居のすぐそばの『天野屋』で冷やし甘酒を飲みました。このお店は納豆などの発酵食品も扱っていますが、甘酒が有名なのだそう。新鮮な麹の味がする濃厚な甘酒で、冷えているのに味がぼけず、しっかりとした風味がしました。

 

それから、『竹むら』という甘味処に寄って名物の揚げまんじゅうをお土産に買い、藪蕎麦の開店10分前に到着。すでに10人ほどのお客さんが並んでいます。

建物は、木が多用された日本的な内装ですが、だいぶ現代的になっていました。店舗部分を拡大して席数を大幅に増やし、天井も高くしてあるので、もうこじんまりした雰囲気ではなくなり、カウンターの向こうの女将さんまでが遠く感じてちょっとさみしいような…。広くてもにぎわっていて、これはこれで良いのでしょうけれど、以前の数寄屋造りのお店を知っているだけに、そちらが懐かしくなってしまいます。

 

それでも変わらないのは、やはりお蕎麦の美味しさ!

私は夏限定の『冷やし茄子蕎麦』を注文。冷たい焼きナスと千切りのミョウガ、鰹節がのったお蕎麦で、スダチを絞っていただきます。きりっと冷えた出汁のちょっと尖った鰹節の味がこのお蕎麦には良く合います。しぼりたてのスダチの香りとさわやかな酸味、糸のように細く刻まれたミョウガの風味と食感がまたたまらず、食べ進めるのが惜しいほどの美味しさでした。美味しいお蕎麦なので、当然、蕎麦湯までおいしい!

 

店を出てニコライ堂へ向かいましたが、閉まっていて見学できなかったので、またぶらぶらと坂を下り、お稲荷さんを見つけるとお参りしたりしながら神保町へ。

暑い日だったので、東京初の紅茶専門店だったという『ティーハウスタカノ』でお茶でもということになりました。キャンブリック・ティーという蜂蜜入りのアイスティーが美味しかったので、茶葉までつい買ってしまいました。

同封された紙には淹れ方などだけでなく、忙しなく余裕がないこの社会において、一杯の紅茶を丁寧に入れることがいかに心に豊かさを与えうるかについて、「おお!ここまで言うか」というほど語られていて、店主の紅茶文化にかける熱が伝わってきます。紅茶党の私はおもわずにんまり。

 

そして、神保町と言えばもちろん古書店!こればかりは見たいお店も見るペースも各々で違うので、あとでニコライ堂に集合することにして解散。

私は店先の特売コーナーで宝探しをしながら、美術関係のお店をまわりました。ここに来るたびに思うのですが、なんと時間の過ぎるのが早いこと!

「ああ、もうこんな時間?まだ見たいところあるのに!また来ないと…」と後ろ髪をひかれながら立ち去るのも毎度のことです。この日も、あきらめ悪く目だけは背表紙を追いかけながら引き返していると、なんと探していた小説が上下2巻、800円で売られているのを発見!ほぼ半額です。あきらめ悪く見ていて良かった!!もちろんこれも買いました。

 

戦利品で重くなった鞄を肩にかけて、ニコライ堂へ。

今度は聖堂も開いていて見学ができました。300円を払うとパンフレットとろうそく1本が手渡されます。もらったろうそくを聖人の肖像画の前に置かれたろうそく立てに供えました。

見上げると大きなドーム、そして正面には金をふんだんに使った祭壇がいくつもあり、数多くの宗教画が掲げられています。遠くて聖人を見分けるのは難しいですが、絵自体はかなりメリハリをつけてはっきり描かれているようです。

ボランティアのガイドの方がニコライ堂の歴史や正教についてなど説明してくれましたが、興味深いのはカトリックなどを分派ととらえ、正教こそが一番純粋に初期キリスト教に近い信仰の形を守っていると考えていることでした。西洋の音楽は教会の祈祷などがルーツとされ、より音楽的に、複雑に、美しく、神にささげられるように…と発展していったと言われていますが、正教では音楽以前のお経のような祈祷のみで、楽器の伴奏もいっさいなしなのだと聞きました。

まだまだ話し足りない様子のガイドさんでしたが、閉館時間が迫り、ニコライ堂をあとにしました。

 

兄のリュックサックに神保町での戦利品を一部入れさせてもらい、軽くなった鞄とともに帰途へ。

久しぶりの街歩きは、美味しいものをいただき、歴史に触れ、戦利品(本)にも恵まれ……と、とても充実した一日となりました。


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コメント: 3
  • #1

    ボッコちゃん (木曜日, 24 9月 2015 21:57)

    神保町は学生時代、社会人時代(職場が近かった)よく行きました。昔からあった和菓子屋さんやケーキ屋さんもまだあったのは嬉しかったです。街並みはそんなに大きく変わって無いようだけど古本屋さんに来る学生さんは少なくなったんだってね。寂しいな。

  • #2

    凹太 (金曜日, 25 9月 2015 08:14)

    昔歩いて行ける距離に住んでいたにも関わらず、ニコライ堂、神田明神にこれまで行ったことがないです。今度時間を作って冒険、新発見の旅に出ましょうか。でも、その前に行ったことのない国に行きたいものです。そんなことを考えていたら、ニコライ堂は後回しになるかもしれません。

  • #3

    nana (火曜日, 10 11月 2015 11:08)

    ボッコちゃん:最近の学生は勉強しなくなった、と教授たちが口をそろえていましたが、古本屋さんを活用しないとはもったいないことをしているものです。世界で一番の古本屋街なので、いつまでもあの雰囲気で残っていてほしいですね。
    凹太さん:案外身近なところに住んでいる方が、そういう場所に足が向かないものかも。
    私も日本三大霊山という成田山が遠からぬところに住んでいながら、年に一度もお参りしない年もあるくらいですし。隅にある出世稲荷(しゅっせいなり)にはお参りに行かなくてはいけないかもしれませんけど…!