時計の修理

気がついたら掛け時計がひとつ、動かなくなっていました。8角形の木枠にローマ数字の文字盤がシックな振り子時計で、子供のころサンタクロースにもらったものでした。(我が家を担当するサンタクロースは子供が今欲しがっているものというより、サンタクロースが選んだものをくれることが多かったのです)

子供心に「シックでいいな」と気に入ったものですし、思い入れもあります。しかし、修理を頼もうと思ってメーカーに問い合わせると、「現物を見てみないと分からないですが、1万円くらいは見ておいてください」とのこと。そんなにかかるのかとびっくりして訊くと、「技術料がかかるし、修理する工房までの送料もあるので」と言います。

しまいには「何かの記念だとかいうのではなければ、修理せずに新しいものを買った方が安く上がりますよ」とまで言われ、腑に落ちないものを感じました。

 

一応新しい時計も見てみましたが、近頃は本物の木を枠に使っている時計自体少ないし、クラシカルなデザインもなかなかありません。

もし大したことのない故障だったら、自分で直せることもあるかもしれないと思い、ネットで情報収集をすると、ムーブメントごと取り換える方法が載っていました。ムーブメントはセイコー製が広く出回っていること、振り子時計用も入手できること、針も好みのものに替えられることもわかり、さっそく試してみることにしました。

 

おそるおそる時計の裏蓋をはずしてみると、中は案外単純な仕組み。文字盤と針の高さの調整などには少し工夫が要ったけれども、なんとかムーブメントと振り子を付け替える事が出来ました。前に使っていた振り子より少し短いのは惜しいですが、時計がよみがえったのはとても嬉しい!

 鬼の首を取ったように、「ふふん、ちょっと仕組みとコツだけ覚えればできるじゃない。なにが”技術料”なの?」と調子に乗って、ほかの時計にも手を伸ばしました。


ひとつは電気時計のリメイクです。不思議の国のアリスのお茶会をイメージして時刻を3時に合わせ、インテリアとして飾っていましたが、この古い時計の感じを生かしたまま新しいムーブメントで動かせないだろうかと思ったのです。

『セレクト スヰッチ時計』とラベルが打ち付けられたとても古い時計で、おそらく電池式の時計が出回る前のもの。裏から伸びたコードからして、どうやらコンセントにつないで使うらしいということくらいしかわかりません。いったい全体、どういう風に動いていたものなのか…??


中を開けると、歯車がいくつも出てきて、何に使うのかわからない不思議な部品もたくさん。文字盤周りと固定に必要な部分だけ残してはずしてしまいました。

クオーツのムーブメントをはめようとしたのですが、穴を広げないとはまらないことがわかり、棒状のやすりで金属製の文字盤の穴を広げたりして、やっと取り付けました。時計の針も前のものは使えないので、合う大きさのものを買ってきて付けました。中の構造が複雑なので、電池を交換するときはちょっと面倒なことになりそうですが、古い外観のまま正確な時計として使うことができるのはいいものです。

 

もうひとつの時計は、祖父母が結婚祝いに会社から頂いたのだという、65年ほど前のゼンマイ時計です。ゼンマイや歯車を磨きましたが、一箇所だけどうしても動かないところがあり、ゼンマイ時計としては使えません。それでもちょっと浮き彫りが入った木箱とレトロな字体の文字盤などにあじがあります。飾っておくだけなんてもったいない!

これも文字盤と外の箱だけを残して、ゼンマイや振り子、鐘の部分などは取り外してしまいました。取り外しておいていうのもなんですが、これらの部品の美しいこと!これもおそらく真鍮製で、全体が金色をしています。ゼンマイを巻いて針を動かすといい音で鳴ります。これだけでもしばらく遊べるくらいの面白さ!

 

この時計にも新しいムーブメントを取り付け、針を付け替えました。振り子は大きさが合うものがなかったので、飾りとして時計の下部にぶら下げるにとどめます。それでもアンティークらしい味のある掛け時計となりました。これはアンティークでまとめようとしている、自室で使うことにしました。

最新式の道具は便利だけれど、どうも私の肌には合いませんし、美しいと感じるものにはあまり出会えません。アーツ&クラフト運動の創始者、ウィリアム・モリスは「美しくないものを家に置いてはいけない」と言っています。さすがにそこまで徹底はしませんが、多少手がかかっても、古いものを大事にして、なるべく美しいものに囲まれて暮らしたいものだと思います。

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コメント: 3
  • #1

    ボッコちゃん (木曜日, 24 9月 2015 21:47)

    新しい物が綺麗なのは当たり前だけど、古くなっても美しい物っていいね。そういう物と長くお付き合いしたいものです。

  • #2

    凹太 (月曜日, 28 9月 2015 11:45)

    楽しく遊んでいますね。今手元に工具がないので先日も金属を切るのこぎりで、木を切りましたが、時間はかかり綺麗に切れませんでした。道具は大事と痛感しました。何か道具があればもっといろいろなことができるにと思います。その点はうらやましい限りです。でもあるもので工夫して作るという事も楽しいですよ。負け惜しみに聞こえるでしょうが。

  • #3

    nana (火曜日, 10 11月 2015 11:12)

    ボッコちゃん:古くなるほど美しくなっていくもの、というのもありますね。ひともそうであればいいのに。そういう味のある人になりたいものです。憧れ!
    凹太さん:負け惜しみだとは全く思いませんよ、その気持ちはわかりますもの。
    次は商売道具の刷毛などの画材をうまく整理して保管できるようなものを作ろうかと考えています。壁にレールをつけてフックでつるすのもありかな。考えるだけでも楽しいです。