完成!

(実物はもう少し色味があります)
(実物はもう少し色味があります)

わが庭では、彼岸花が終わり、銀木犀(金木犀の仲間ですが花は白く、香りもすっきり)が満開、杏や梅の葉も落ち始めました。まだ花はあるけれど、緑は少なくなり、どこかセンチメンタルな秋のムードです。

枯れたゴーヤのグリーン・カーテンと、ブルーベリーの鳥除けネットはそろそろ片づけたいし、穂を付けた雑草もいまのうちに一掃しておきたい、と思ってはいるのですが、なかなかそこまで手が回りません。

藍染めをしてみたくて育てていた藍も、刈り取る前に花が咲いてきてしまいました。これはまた来年でしょうか。いつかストールを絞り染めしてみたいと思っています。

 

 

先日、絵の納品に行ってまいりました。「わが社の建物の絵を」というご依頼で、F50号(約117×91㎝)の日本画を描いていたのです。

『安全第一』の看板を正面に掲げた実用的な建物ですが、「描いてくれったって、おしゃれでもない、こんな建物だけどさ」「でも思い入れはあるんだよ」とおっしゃる重役の方々。その言葉には実感があり、この社屋への愛着がよく伝わってきて、こちらまで嬉しくなりました。

 

絵の中に、社屋と10tトラックの一部を入れると、どうしても空が大きくなります。鳥を飛ばすことを提案すると、「ツバメはどうか」とのこと。夏になると、たまに建物の中へ迷い込んでくるのだとか。そんなエピソードも面白く、空には3羽のツバメを飛ばしました。

また、入り口のわきの立派なシャクナゲはシンボルツリーになっているようで、こちらも思い入れがあるとのこと。今の時期は花もなく、夏を超えて木全体が疲れた顔をしていますが、絵の中ではもちろん満開にしてみました。

こんなとき、写真ではなくて絵でなら思い切り『嘘がつける』(もちろんいい意味ですが)ということが、たまらなく愉快になります。「ああ、絵描きでよかった。魔法が使えてよかった!」と思います。

 

完成した絵をドキドキしながら持って行くと、従業員の方々がわいわいと集まってきて、余計に緊張。でも気に入っていただくことができたようでほっとしました。

 

さっそく応接室に飾っていただくことに。応接室は濃褐色の木の壁で、屋久杉の巨木を使った重厚なテーブルとイスが貫録たっぷりに鎮座しています。

合わせる額には悩みましたが、ゴージャスすぎてもセンスがないと思い、周囲から浮かないようなシンプルな木の額に。部屋に良く馴染んでいるようでした。

(飾ったところを写真におさめるのを忘れたので、絵の写真だけ載せておきますね!)

 

「やっぱ写真でなくて絵は雰囲気が良いな」と褒めて下さったり、「なんかちゃんとした会社みたいだ」と冗談をおっしゃったり。地震でも落ちないように添え木をつけて工夫してみよう、という話も聞こえてきます。

 

自分の作品が手を離れるさびしさを、よく『里子に出す』とか『嫁に出す』なんて言い方をしますけれども、今回は「うんうん、いいところへ落ち着いてくれたわ!」と安心して見送ることが出来ました。

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コメント: 3
  • #1

    ボッコちゃん (水曜日, 08 10月 2014 22:34)

    自分の描きたいものではなく、よそのかたの思い入れのある物を描かせていただくのは光栄でもあり、難しくもありますね。10トントラックもご希望だったのかしら?後姿が良いですね(笑)今までご縁の無かった職種のかたとの交流もまた楽しいもの。地味な作業ですがひとつひとつの仕事を誠実にしてこなして行くことが大切かと思います。あら、上から目線?ごめんあそばせ。

  • #2

    凹太 (日曜日, 12 10月 2014 06:01)

    絵はいいですね。魔法が使えて。また、喜んでいただき良かったです。仕事をして反応があるとうれしいですね。それに引換え自分の仕事はまったく魔法が使えず、人に喜んでもらうことは無く、結果に驚いたり、がっかりしたりするだけです。ところで、アオスジアゲハやカマキリをシャクナゲに書き加えてもよかったかも。それでは魔法の使い過ぎ?

  • #3

    nana (月曜日, 13 10月 2014 17:14)

    ボッコちゃん:
    トラックはご希望でしたが、全部入れると全体が小さくなると申しましたら、ロゴが見える後ろ姿でいいとのことでした。文字にも遠近法がかかるので、レタリングが多い今回は大変でしたが、楽しかったです。
    ひとつひとつ誠実に、はいつも胸に留めています。未熟者ゆえ、なかなか難しいですが(苦笑)いつもアドバイスありがとうございます。

    凹太さん:
    なにか描きこむには、あのシャクナゲは小さすぎました。残念!
    たしかに実験では魔法は効きませんが、人に喜んでもらえないことはないと思います。逆に、絵を描くことだって、結果に驚いたりがっかりすることが多いものです。技術が足りなくて嘆いたりも。
    でも最近思うのは、絵を描いたり物を作ったりするのは、「職業」ではなくて「生き方」なのではないかということ。もっと突き詰めて昇華させていきたいです。