素晴らしい案山子

家から車でちょっと行った田んぼのそばに、毎年、案山子(かかし)が立ちます。

案山子なんて、木の棒を十字に組んで、適当に古い服を着せ、人間らしい格好にさせておけばいいものだと思っていたのですが、数年前、ここの案山子を見てから考えが変わりました。

 

その案山子を見つけたのは、ボッコちゃん(いつもコメントを下さる、このブログの読者です)でした。

『材木に腰を下ろして、道端で休んでいるおばあさん』を横目に車でそこを通りかかり、しかし、帰りもおばあさんが全く同じ姿勢で座っているので妙に思い、ようやくその『おばあさん』が案山子だと気が付いたのでした。

その話を聞いて、次は私も一緒に見に行ったのですが、ちょっと屈んだ背の曲がり方など、本当にリアルで、すぐに案山子と見抜けなかったのも納得できるなと思ったものです。

案山子として役に立つならそれでいいや、というのではなく、楽しんで作っているんだろうなと、見も知らぬ作者のことを考えたのを覚えています。

 

そして今年。案山子のことなどすっかり忘れてその道を車で走っていると、前方に車を停めて、道端の何かをカメラで撮影している男性がいました。その車が去った後にちょうど通りかかり、ふと何を撮ってたのかなと思って横を見やると、なんと…

サザエさん一家が!!! これまた力作の案山子です。

「さっきのおじさんが撮っていたのはこれね!」と合点がいき、私も写真を撮るべく車を停めたのでした。

 

サザエさんたちの案山子がそろってこちらを向いて立っていて、横には『選挙に行こうよ』という看板もあります。(選挙後にはこの看板は外されました)

ここまで原作に忠実に案山子を作り込み、しかも投げ出さずに全員を作りあげていることにも驚きます。よくぞここまで情熱をかけて…!と思わずにはいられません。

洋服も子供服や割烹着をわざわざ用意したりして、これまで以上に資金も気合も入っています。

 

しかも今回は『選挙に行こうよ』という社会的なメッセージつき。

面白い案山子があるから、つい目が引き寄せられ、そのそばにメッセージが書かれた看板を見つける……こんなに押し付けがましくない投票の呼びかけは、初めて見ました。下手な公共広告よりずっと気が利いているので、このまま使いたいくらいです。

ただ、『選挙に行こうよ』の『よ』の字は小さく、あとから付け足したかのような印象を受けます。もしかしたら初めは『選挙に行こう』と書いてあったけれど、ちょっと照れて『よ』を付けてみたのかな、などと考えてしまいます。

 

でも、こんなに凝った案山子を、一体どんな人が作っているのか。

形の取り方などを見ると、意外に30~40代くらいの女性が作っているのではないかな、などと勝手に想像していますが、本当はどんな人なのでしょうか。

すぐ近くにある豆腐屋さんで訊けば、「ああ、それなら…」と、すぐに教えてもらえそうですが、もう少し知らないままでいたい気もします。

 

どんな人が作っているのかは知りませんが、そのサザエさん一家の案山子は大事にされているようで、雨の朝には一人一人に透明のビニール袋がかぶせてありました。

コメントをお書きください

コメント: 7
  • #1

    ボッコちゃん (日曜日, 04 8月 2013 11:07)

    写真を拡大するとサザエさんの頭に3つの山がちゃんとあって嬉しくなりました。洋服もレトロで懐かしいわ。白い割烹着、久しぶりに目にしました。こういうの一生懸命作っている人、私も好きです。

  • #2

    凹太 (月曜日, 05 8月 2013 11:21)

    以前、青森県の田舎館村だったと思うのですが、案山子がたくさん住んでいる所があり、「努力賞」、「そっくりで賞」、「おしい」などと笑いながら車で通ったことを思い出しました。   雨に当たった案山子はかわいそうですが、ビニールの「傘」があれば大丈夫ですね。ほんとに力作。スゴイデス。

  • #3

    nana (金曜日, 09 8月 2013 14:28)

    ボッコちゃん:くつもちゃんとはいていて、本当にこのまま投票に行くところみたいですよね。細部にこだわりを感じます。
    凹太さん:かかしは、世界各地で昔から、呪術的な意味合いで使われても来たようですが、そういうことはさておき、農家の人の手作りの人形としてみると結構面白いですよね。賞をあげたくなる気持ちもわかります。
    高校の頃、美術部に依頼が来て、何かのイベントに使うから、かかしを一人一体作るように言われたことがありました。どんなイベントなのかも知らされず、やる気も起きない中しぶしぶと、ピエロっぽいのを作ったのを思い出します。もっと愛情込めて作ってあげればよかったかなと今更反省しました。

  • #4

    kakashi (日曜日, 17 8月 2014 12:36)

    偶然このサイトを見つけました。
    この案山子は今年喜寿を迎える母が作ったものです。
    (知らない方が良かったかしら)
    一度に7体も作ったせいかかなりの反響でした。
    今年はもっと良いものを・・・とテーマも決めているうちに
    作り損ねてしまったそうです。
    (母は元気!生きています)

  • #5

    nana (火曜日, 19 8月 2014 00:40)

    kakashiさん:
    実はこの話を書いたとき、「もしかしたら情報が寄せられはしないかしら」と思っていたのです。でもまさか作者のお身内の方からコメントを頂戴できるとは思ってもみませんでした!
    喜寿を迎えるお母様の作品だったのですね。勝手にいろいろと想像をめぐらせるのも楽しいですが、正解がわかって良かったです。
    やはりあれだけの作品、反響があるのも当然でしょう。今年は作られなかったとのことですが、いつかまた実用以上に凝った、面白い案山子たちと出会えるのを楽しみにしておこうと思います。
    コメント有難うございました。お母様にもよろしくお伝えくださいませ。

  • #6

    kakashi (土曜日, 23 8月 2014 10:45)

    奈々さん、個展を開いていましたよね。これも又、偶然なのですが、北総花の丘公園に行った時、奈々さんの個展開催のリーフレットが置いてありました。日程的に見に行く事は出来ませんでしたが、リーフレットの名前をみて、母の作品にコメントして下さった方だと直ぐにわかりました。いつか、奈々さんの作品を見てみたいです。

  • #7

    nana (水曜日, 27 8月 2014 20:21)

    kakashiさん、こんばんは。
    私は毎年、北総花の丘公園で個展をしていて、今年で4回目でした。(なるべく春に開催していますが、会場がとれず春でなくなってしまうこともあります)
    でもまた来年も開催しますので、そのときはぜひいらしてください!
    日程が決まりましたら、広報などにも載せますし、ホームページでもお知らせしますね!