骨董市の収穫

先日、地元の小さな骨董市に行ってきました。私が高校生の頃、町おこしの一環として始まった市ですが、その頃から都合がつけば行っているので、気が付けば長い付き合いです。

高校生の頃は簪(かんざし)を集めていました。また、そんなに高くない中から気に入った小皿や漆器などを探すのも楽しみでした。今も簪をよく見ますが、買うことはめったになくなりました。「これは!」という簪に出会ってから、それが基準になり心を動かされにくくなったのです。でも簪自体は好きで、やっぱり目が探してしまいます。

 

行き始めたころは何もかもが目新しく、目移りしたものですが、だんだんと狙いが定まり、自分の好みも出来てきました。

まだまだ目利きとは到底言えず、知識もありませんが、一目でなんとなく「いいものだ」とか「古びたように見せているけど新しいもの」などと見抜けるようになってきた気がしますが、骨董は車の運転と同じく、その気になってきたところが危ないので、引き続きいい気にならぬようにしようと思います。

 

来ても気に入ったものがなく、ざっと見て気分だけ味わって帰るだけの日もあります。

でもこの日は、私にとって”買う日”だったのでしょうか。収穫が沢山ありました!
まずはいつものぞく、着物を安く売っているお店で着物を。近いうちにちゃんと着付けを覚えようと思いつつ、気に入ったのがあると買っておくのです。(高校生のころからちょっとずつ集めているので、そろそろなんとかしないとなりません)

骨董市と言っても、着物はわりに新しいものが多く、助かります。というのも、古い着物は袖が短く、直す必要があるものばかりなのです。

しかし古い着物には、現代では考えられない手間をかけた染め・刺繍が施されていたり、歳月を超えた風格と呼びたいものが備わっていたりもします。柄も現代の着物よりずっと典雅だったりして。それが何とも言えず好きなので、古い着物や帯も気に入ったものがないか、いつも探しています。

 

その次に、昔の子供向けのおもちゃをおいている店で、だれかのコレクションだったらしい、お土産物っぽい飾りや民芸品が放出されているのを発見。集めた人の趣味だろうけど、どれもミニチュアサイズ!

榛名天狗の木のおもちゃと、ワラでできた馬、歌舞伎の人形(紅白の獅子)、木彫りの鹿の夫婦を、コレクションが詰め込まれた箱から選び出して、連れて帰りました。みんな小さいけど、よく出来てます。歌舞伎のはふたつで300円、あとはひとつ100円なり。

こういうコレクションは、集めた本人がいなくなるとよく放出されます。家族には「いらない」と判断されたのでしょう。同情をよせつつ、気に入ったものがあれば「今度は私が大事にしますからね」という気持ちで連れて帰ります。

 

そして、いつも気前のいいおじさんのお店に到着。奥は箱入りの漆器や茶道具ですが、店先には安売りのコーナーがあり、そのとき手に入ったものを行き当たりばったりに置いているので、何があるかはお楽しみ。この日は木箱に半端もののお椀が入っていました。そこで見つけたのが、2客しかないけど、蓋つきのおわん。ケヤキで、木目が綺麗です。お椀の方には何の模様もありませんが、蓋の内側にだけ桜の蒔絵があり、蓋を開けると初めて桜が目に入るという、粋な演出。この桜の蒔絵がまた繊細でよろしい。一目ぼれです。

 

すぐさま2客のお椀を確保し、ふと横を見ると、今回はなんと着物もあります!この店で着物を見たのは初めて。おそるおそる覗いてみると、行李2つ分とはいえ、状態がよく、新しいうえに、持ち主の趣味が私と合っている(これはとても大事!)という幸運。
しかも熱心に見ていたら、おじさん(どうも持っていても邪魔だし、専門外だから全部売り払いたいらしい)が時計を見て、「11時を過ぎたから、タイムセールだよ!骨董屋でタイムセールなんて聞いたことないけど。帯も着物も1枚500円のところ、2枚でいいよ!」なんて言い出しました!
”え、骨董屋でタイムセール?スーパーじゃあるまいし。もともと安いのに、250円でいいの?!もしかして、やけっぱち?” と、内心突っ込みたくもなりましたが、そこは黙って、ありがたく買い込みました。帯に着物、それから状態の良さと日本刺繍に惹かれて、振袖も。

…そう、振袖です。まさかこんなところで振袖に出会うなんて。

白地なので、いかにも振袖という派手さではないけど、着る機会はちょっと思いつかず、悩みました。目立たない薄いしみがひとつだけで、一度着たかどうかというくらいきれいだし、大丸で買ったものみたいだからものも悪くないはず。でも着る機会はなさそう。かといって、素材用とするにはあまりに惜しい状態の良さ!

ううーん、と悩むことしばし。着ないかも、と頭ではわかってる。でもこれを行李に残して去ることがどうしてもできなくて。こんな綺麗だし、でもって250円だし。

ああ、いい加減、しゃがんだ足もしびれて来た。こんなに悩んだ末に置いて行ったら、今夜夢に出てきたりするかも。着物だって連れて行ってくれると思ったのに置いて行かれたら、がっかりするかもしれない。

……ええい、ままよっ!!!

 

ずっしりと重い荷物を抱えつつ、幸せに帰宅しました。

 

 

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コメント: 3
  • #1

    ボッコちゃん (木曜日, 08 11月 2012 22:16)

    買物に行ってもなんだか買う気に慣れない日と買いたい物が多くある日があって、骨董市は必需品を買う訳ではないので特にその日の気分が出ますね。ルンルンで帰って来た様子が目に浮かびます。骨董市のタイムセールって聞いた事ないけど、面白いね。こちらにも蚤の市があるらしいです。まだ行ってませんが、現地の人と行かないとぼられるらしいのでつれて行ってもらう予定です。

  • #2

    凹太 (水曜日, 28 11月 2012 09:15)

    骨董品て不思議だよね。人によってはごみだし、人によっては宝物。骨董市でのぞいていて、目があってしまった物はしまって置いてもなんか嬉しい。でも飾ったり、使ったりし楽しみたいものですね。さて、お宝はどんなものかな?今度、現物をお見せ下さい。

  • #3

    nana (月曜日, 03 12月 2012 13:41)

    ボッコちゃん
    ええ、るんるんで帰ってきましたとも!でも着物って重いですね。
    蚤の市、イタリアでも行きましたが、現地の暮らしぶりがわかって面白いですよね。

    凹太さん
    確かに、その価値を「知る人ぞ知る」、いや「要る人は要る」というべきでしょうか。そこが骨董の面白い点でもあり、難しさでもありますね。
    此度の戦利品、ご帰国なさったらぜひお目にかけましょう。お楽しみに!