里山めぐり

里山を散歩しました。あたりの水田はすでにほとんど稲刈りが終わり、もみ殻を焼いた田からは、乾燥したもみ殻やワラのにおいと炭のにおいとが混ざった、複雑なにおいが漂ってきます。 このにおいを嗅ぐと、「ああ、稲刈りも終わって秋本番だな」という実感が湧いてきます。

これも秋を感じさせるにおいのひとつですが、本当を言えば、収穫前の稲の香りのほうがずっと好きです。風向きによってですが、少し前までは時折、夜風に交じって我が家に稲穂の香ばしいにおいが届いていたものですが…。季節は人を待たないものですね。

 

 

さて、今回の散歩の目的はセンニンソウの花探し。モデルを務めてくれているセンニンソウの花が散ってきてしまったので、代役を探していました。デッサンは終わっているし、いくつかはまだ咲いているので描くには困りませんが、実物があった方が助かります。

花期が長くないので、もうどこにも咲いていないだろうと思ってはいましたが、やはりもう花は咲き終わってしまい、仙人の髭のような白い毛が付いた種が出来かけているところでした。

 

そういえば以前、牧野富太郎の書いた植物図鑑でセンニンソウを調べたとき、解説を読んで少々面食らった覚えがあります。

「”仙人草”というからには謂れがあったのだろうが、いまではなぜそう呼ぶのかはわからない」というようなことが書いてあったからです。「え、種があんなだからでしょう?」と、種を初めて見た時から「言いえて妙だ!」と勝手に納得していた私は戸惑いました。

牧野先生は種の特徴についてももちろんご存じですし、難しく考えすぎてしまわれたのでしょう。こういった”灯台下暗し”は、学問の世界にまだまだたくさんありそうです。

 

センニンソウの花探しをあきらめ、里山めぐりを続けます。常に目がきょろきょろと植物を追ってしまうのは、職業病とでもいうべきでしょうか。

返り咲いた露草の青はまぶしいほどです。秋の花粉症のもとにもなるカナムグラは、今が盛りらしく薄黄色の花粉がこぼれんばかり。時々、とんぼらしくない緊張感ある飛び方で、オニヤンマが飛んでいるのに出くわします。

 

目的もなく歩きながらも、なんとなく「今日は何かに会えそうな気がする」という予感がありました。私のこういう予感はときどき当たるのです。

山のふもとから湧き出した清水が溜まったところまで来たとき、「例えばこういうところで。」と覗き込んだら、小さなカニに出会いました! 甲羅の幅が1.5センチくらいの小さなカニです。

冷たい清水に手を入れて捕まえてみました。カニを捕まえるのは初めてです。はさみで手を挟まれないかと緊張しましたが、意外にあっさり捕まえられました。今はもうその名を返上しましたが、”虫愛ずる姫”だった幼い日、カマキリのすぅっと薄い鎌に切られて以来、こういう相手にはつい身構えてしまいます。

しかし、小さいのによくもまぁ、なんと精巧に出来ていることか。よくイラストで見るようなカニの図からは、想像もできない複雑な体の作り。足や甲羅なども複雑にパーツが組み合わさっているのが見えます。

 

ここでカニに出会ったことには驚きましたが、そのカニを放してやり、また少し行ったところで別のカニ2匹と出くわしたにもびっくりです。時期などの関係なのでしょうか。このあたりでカニを見たのはこれまででたった1回だけ。しかし、世間一般に珍重がられるカワセミなら、年に2~3度は見かけています。なので、私にとってカニは、カワセミより珍しい存在なのです。観察する前に飛び去られてしまうことが多いけど、ちょうど数日前にも見たばかりです。

 

カワセミ、オニヤンマ、そしてカニ……まだまだこのあたりの自然は豊かなのだな、と再確認した散歩でした。

 

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コメント: 3
  • #1

    凹太 (日曜日, 23 9月 2012 07:26)

    まだ日差しは強いけど、朝夕は涼しい季節になったのですね。沢蟹でしょうか。綺麗な流れる水のあるところにいるように思います。ところで、彼岸花は咲きましたか。いつも同じような時期に咲くのはやはり不思議な気がします。こちらではハチドリが蜜を探して、停止、目にも留まらぬ速さで移動、停止とを繰り返しています。

  • #2

    nana (日曜日, 23 9月 2012 15:04)

    凹太さん、こんにちは。ハチドリは植物園でしか見たことがありません。そのあたりにふつうに生息しているのですか、それはすごい!

    彼岸花は咲き始めましたが、例年より少し遅いようです。毎年咲いているところなのにまだ芽も見えないところも多く、わが庭でもまだです。今年の水不足が効いているのでしょうか。
    一度彼岸花がわぁっとたくさん、満開に咲いている中に佇んでみたいと思っているのですが、なかなか叶いません。

  • #3

    ボッコちゃん (月曜日, 24 9月 2012 21:37)

    植物園に行きました。こちらの花はあまり香りがありません。どうしてなのかしら?一生懸命花に顔を近づけて香りを嗅ごうとする変な日本人が。言わずと知れた凹太氏です。植物園でも植物の病気に目が行くようです。職業病でしょうか。やれやれ。