灯消しライター、求む

ハリー・ポッターに出てくる魔法の道具のひとつに『灯消しライター』というのがあります。周囲の明かりという明かりを瞬時に消すことができるという道具です。

シリーズ1巻目の初めに登場し、最終巻でも意味ある働きをする道具ですが、正直なところ、使い道が限られすぎていて、魔法の道具にしてはあまり魅力的ではない印象でした。

 

が、昨夜はその『灯消しライター』が欲しかった!とても欲しかったのです。

”ああ、もし今、あれが手の中にあれば、あの街灯を消してやるのにっ!”と思いながら、夜が更けてもなお煌々としている、一本の街灯をにらんでいたのです。

なぜその街灯を消してしまいたいか。それは天体観測をしようという晩には、街灯の光など邪魔ものでしかないからです。

 

昨晩はペルセウス座流星群のピークでした。朝刊の天気予報では、夜は曇りだったので諦めていたのに、夜になってみたら綺麗な星空が広がっていました。外で見るつもりだったのですが、蚊を気にしながら星を見るのもね、と気が変わりました。かといってガラス越しに見るのでは臨場感が足りない。と、そこでいいことを思いつきました。

 

脚立を設置し、部屋の明かりを消し、準備はオーケイ。脚立に登り、天窓を開けて外をのぞくと、ちょうどいい位置にカシオペア座とペルセウス座が見えました。

道の向こうの街灯が一本、威嚇的なほど眩しく辺りを照らしているのが目につきますが、それを除けば大して障害となる光もありません。(だからこそ逆に、その街灯を消してしまいたくなるのですが。)ただ、月は細いわりに明るく、光も澄んでいて、秋の近づいているのを感じました。

 

星空…ここでは、いったい何等星まで見えているのでしょうか。田舎なだけあって、星だけはよく見えます。星座の中にもいくつも小さい星や、星団というのでしょうか、星が密集しているのが見えるほどなので、かなりよく見えている方なのではないかと思います。

綺麗だな、と見惚れていると、星の間にすぅっと白い筋が引かれ、すぐに消えていきました。流れ星です。

「今、流れたよね?」と人に訊きたくなるような目立たないものもあれば、「おおっ見事な!」というものもあります。

ひとつだけ、ひときわ大きく、赤く燃えながら、白い軌跡をくっきりと引いて流れて行った星がありました。私たちは綺麗だとかロマンティックなどといって流れ星を喜ぶけれど、本当は星屑が燃えながら落ちてゆく姿なのだ、ということを考えて切なくなりました。

 

実は、私は小さな流れ星をひとつ持っています。博物館のミュージアムショップで、岩石の標本のコーナーに売っていた鉄隕石です。いびつな形で、銀色に輝いている、ちいさなちいさな星。

誰かに拾われて、売られて、岩石標本になって、日本の博物館に来て、幼い私のものになって……。今はほとんど仕舞われっぱなしになってはいるけれど、あの子もかつてこうして燃えながら落ちてきたのねと、なんだかいとしくなりました。

 

 

 

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コメント: 2
  • #1

    凹太 (水曜日, 15 8月 2012 10:20)

    目が慣れると実は夜は意外に明るいものです。山で野宿したとき、星明りの中次々と流れ星が見えて、自分の存在のなんと小さなこと、そして流れ星がこんなにあるなら自分の望みは絶対かなうぞと考えたことを思い出しました。一緒に流れ星を見た人はその後、山に魅せられてしまいました。蚊に刺されなかったようでよかったです。

  • #2

    ボッコちゃん (水曜日, 15 8月 2012 10:41)

    そちらは星が良く見えますね。寒いのを我慢して流れ星を見た事を思い出しました。こちらは街灯がついているせいか星は見えません。その代りと言ってはなんですが、遠くの山のかなり上まで民家があり夜景が綺麗です。夜景おたくとしては嬉しい限りです。