至福の読書

右の青い皿は、お手製の湯葉。
右の青い皿は、お手製の湯葉。

昨日は七夕。小学生の頃は、学校の休み時間も使ってせっせと折り紙で七夕飾りを作り、家で笹につるしたものです。今ではさすがにそこまでしませんが、何もしないのは寂しい。何か七夕らしいことはないか、と思ったところで、そうめんを食べる風習があったことを思い出しました。

 

天の川に見立てて、また織物の上達を祈願してのそうめんなのだとか。しかし旧暦なら七夕は暑い盛りのこと、そうめんをつるつると頂いて、夏バテを防ぐ意味合いもあるそうです。

夕方からあいにくの雨模様でしたが、空の上は晴れているはずなので、ふたりは無事に逢瀬を果たせたのだ、と思いたいところです。科学の知識は時にロマンを崩しますが、「地上では雨が降っていても、はるか天空には雲などないのだ」と知っているからこそ見られる夢もあるのです。

 

 

 

このところゆっくり本を読むことができず、どうもフラストレーションが溜まりに溜まっていたようです。“なんだか最近、心の動きがぎこちないな”と違和感を感じていましたが、原因を探ってみても、読書不足のほかに心当たりがありません。

そこで先日、自分に本を読むことを許してみました。すると、干上がった大地が水を吸い込むがごとく、活字が、イメージが、自分の中にものすごい勢いでわーーっと沁み込んでくるではありませんか…!

これは相当乾いていたな、と自分でかわいそうになったほどでした。

 

さて、今日は日曜日。一日を自分のために使うぞー、読書をするぞーと決めていました。そして午後はお望み通り、ゆっくり読書。

先日読んだ本の良かった部分をノートに控えたりしたのち、「さて。」と図書館で借りたままで気になっていた本を読み始めました。そんなに期待はしていなかったのに、この小説が久々の大当たり!

 

テンポよく、複線もきちんと張って、文章には無駄がない。

品のない笑いは一切なく、本好きだけが二ヤリとできる笑いが散りばめられている。

主な登場人物は、作家とその夫という2人だけ。本を書く人と本をよく読む人なだけあって、書き言葉が自然と混じる2人の会話が非常に魅力的。

状況はシリアスなのに、ぽんぽんと行き交うコメディックな会話が楽しい。現実から上滑りしているような明るさなのに、時々ひどく切ない。

そしてどこまでが物語でどこからが現実なのかがわからない、入れ子の様な、ちょっと人を食った形式。

 

この本の前に読んでいたのが、主人公が元・戦場カメラマンで、死期を悟りながら塔に籠って戦争画を描いている……という超シリアスで重たい小説でした。ヒロインが滅茶苦茶素敵!ということを抜きにしても、主題の深さ、内容の濃さからして読み応え十分な本でしたが、感情の振り方がどうしても偏ってしまっていた模様。

その後にからっとした喜劇的なストーリーを読んだことで、やっとバランスが取れた気がします。一か所、なぜか笑いのツボにはまってしまったところがあり、自分でもびっくりするほど、笑いが止まりませんでした。声を上げて笑い転げたのは、本当にいつぶりだったでしょうか。

 

たまたま今の自分に合った読み物だったというのもあるのでしょうが、読み終わって、「ああ、楽しかった。読んで良かった!」と満足し、本を胸に抱えて”物語の幸福”を噛みしめ、作者に感謝する。そんな本に出会えるのは本当に嬉しいことです。

10冊に一冊、いや30冊に一冊でも、そんな本に巡り合えるといいのですが。いやいや、それは頼みすぎってものでしょうか。

 

 

 

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コメント: 3
  • #1

    ボッコちゃん (月曜日, 09 7月 2012 11:18)

    やっと読書が出来てさらにその本があたりで、活字中毒者としてはさぞかし満足された事と推測いたします。私が今いるところも沢山本があります。帰国されるかたが寄付していったものです。読みたいのを我慢して語学の勉強をしています。いつからそんなに真面目になったのかと突っ込みが入りそうですが、お買いものひとつ満足に出来ませんのでやるしかない訳でございます。早くこの状況から脱出したいです。

  • #2

    凹太 (木曜日, 12 7月 2012 05:13)

    そうめんか。涼しすぎてとてもそんな気分にはなれません。でもそのうち、ゆば、しそ、みょうがも恋しくなるかも。今は次々と新しい経験をしているので、後ろを見る余裕はありませんが。季節をお楽しみください。

  • #3

    nana (火曜日, 24 7月 2012)

    ボッコちゃん、凹太さん、コメントありがとうございます。

    ボッコちゃん、読みたい本を我慢して勉強とは…さぞかし辛かろうとお察ししております。語学、頑張ってくださいね!
    (高校生の頃の、考査前の自分を思い出しました。あれは辛かったです)

    凹太さん、そろそろ何か日本の食材が恋しくなる頃でしょうか。刺激したら申し訳ないので、あんまりブログにもそういう食べ物については書かない方がよいのかも…?
    でも、そちらにしかない果物や野菜も沢山あるようですね。いったいどんなものがあるのか、ちょっと興味があります。