真っ赤な道連れ

新しい自転車を買いました。これまで乗っていたママチャリにガタが来ていたので、思い切って買い替えることにしたのです。

ママチャリよりは少しスポーティな自転車で、七段変速ギアつき。

このあたりは坂道の多い土地ですが、すいすい走ります。

 

色は明るい赤です。

自転車屋さんでは、他に黒とシルバーもありました。どんな服を着ていても合うから無難な色にしておくべきかとも思ったのですが、

「いや、自転車に乗る時くらい、ぱっと明るい色を道連れにしたほうが楽しいか!」

と思い直しました。

 

そして、道連れにするならば名前も付けて可愛がってやろうと決め、「トト」という名前を付けました。車体の明るい赤色が、ちょっとおしゃまな少年をイメージさせたからです。

それに確か私の記憶が正しければ、西洋のジョーク集などではお約束として、「トト」という名の少年はクラスに一人はいるような生意気でいたずらっぽい少年と決まっていたように思います。

 

「さぁいつでも行けるよ!どこへでも行けるよ!」とでも言いたげに立っている「トト」を見ていると、わくわくしてきます。

「わくわくもしようというもの、だって私の自転車なんだもの!」と考えて、はっとしました。そう、”私の”自転車なのです。

末っ子の私はおさがりが多く、自分用に自転車を買ってもらったことがありません。おさがりの自転車というものは、もちろん喜んで乗っているけれども、”誰々のものだった自転車”としてしか見られず、いまいち愛着のわきにくいものでした。

 

でも、「トト」は初めて私が自分で「この子にする!」と選んで手に入れた、”私の”自転車なのです。

小生意気で元気のいい「トト」と共に、図書館に、絵になる風景を探しに、それとももっと遠くまで探検に……いろいろなところへ行こうと思います。