銀河鉄道

賢治記念館にて6月に行われる、チャリティのピアノコンサートのプログラムを描かせていただきました。

曲目は宮沢賢治とは関係ありませんが、会場が賢治記念館と言うことで、イラストは宮沢賢治の童話をモチーフにしてみました。

おなじみの『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』、そしてちょっとマイナーですが、ヒナゲシとヒノキの出てくる話からも取材。(本当は『ツェねずみ』もかなり好きなのですが、わかってくれる人が少なそうなので断念。)

 

家に宮沢賢治の童話全集があり、宮沢賢治の世界には親しんでいましたが、やはり絵を描くとなると難しいです。まず宮沢賢治の童話は、淡々とした写実的で地味な話か、幻想的な話かに二極化したものばかり。その上、今回は小さなスペースにモノクロで描いて、人に分かってもらわねばなりません。

 

それだけでも大変なのに、ちょっと資料として参考にするつもりで全集をぱらぱらと繰り始めたはずが、気がついた時には夢中で読みふけってしまっていたりするから困ります。

藤城誠治の影絵の『銀河鉄道の夜』の絵本も、初めから最後まで読んでしまいました。そしてやはり胸がいっぱいになって、しばらくはペンを握ってなんかいられなくなり……完成までにはずいぶんいろんな障害があるものです。

 

やっと構図が決まり、黒いボールペンでトーンを作りながら絵を描いていたら、ふと高校生に戻ったような気分になりました。高校生の頃は、ノートの端などに黒いボールペン一本で、デッサンか版画のような絵を飽きずに描いていたものです。

今の方が技術的には進歩しているかと言えば、意外にそうでもなく、むしろ今ではもう、高校生の私が描いたようには描けない線、作れない構図もたくさんあります。

ただ、昔はものを写実的にしか描けなかったのに、今は抽象的なものや、実物が目の前にないものも描けるようになってきたという点では、格段に違います。

 

ヴァイオリンを描いてみたり、チェスの駒をひとつだけ描いてみたり、前の席の子のマフラーをした後ろ姿を描いてみたり…。時々、部屋を整理しているとそんな落書きが描かれたルーズリーフが出てきます。もう同じようには描けない絵だと思うと、なんだか愛おしく、もう要らないはずなのについつい捨てずに元の場所に返してしまうのです。