レモン・カード

実際はもっときれいな黄色です
実際はもっときれいな黄色です

今年はレモンが11個収穫できました。

レモンの木はあまり寒さに強くないのですが、霜をよけてやれば何とか冬を越します。我が家では大きな植木鉢に植えていますが、毎年いい香りのする白い花と果実を楽しませてくれます。

ちなみに、庭には他に柚子、金柑、スダチ、夏蜜柑がありますが、同じかんきつ系でも花の香りはみんな違います。かんきつ系の花の香りの中にそれぞれの果実を思わせる、柚子なら柚子の、スダチならスダチの香りが溶け込んでいるのです。

 

それに気がついた時、私はとても感動したものでした。蓮の花の茎に、蓮根と同じような穴が通っているのに気がついたときと同じ感動です。

主要な部分の特徴が末端にまで及んでいる。見向きもされない部分にまで本質的なものを備えている。どこを切り取っても「そう」なのだという、その健気なまでの一貫性がとても貴重なものに感じました。自分もそんな人間になってみたいものだと思います。

 

 

さて、籠に入ったレモンを眺めて考えます。この実をどうしよう?

これまでには、料理に添えるほか、ホワイトリカーと氷砂糖に漬けてレモン酒を作ったり、すり下ろした皮と果汁がたっぷりの、贅沢なシトロンケーキを焼いたりしてきました。

でも母との協議(?)の結果、「レモンをレモンらしいまま存分に楽しむには、レモンカードが一番なのではないか」ということで今年はレモンカードに決定!

 

レモンカードは、日本ではまだ知る人ぞ知るですが、イギリスではパンやスコーンに塗ったり、タルトの中に詰めたりしてよく使われている、レモンのペーストです。イギリスのスーパーマーケットでは、ジャムやはちみつの棚に一緒に並んでいます。

 

作り方は簡単。バター、卵、砂糖、レモンの皮のすりおろし、レモン果汁をボウルに入れて、湯せんで温め溶かし、一度濾して、またとろりとするまで木べらで混ぜながら湯せんするだけ。

皮はステンレスのチーズ下ろしで下ろすと楽です。

レモンのさわやかな香りに包まれて、上機嫌でレモンを絞っていると、ふいに果汁が沁みて、手肌が荒れていることに気がつきました。レモンの汁は小さな傷やささくれの在りかを、ご丁寧にひとつひとつ教えてくれます。

あとでハンドクリームを塗って労わってやるからね、と痛みを訴える手をなだめて作業続行。レモンカードには、ちりちりした痛みくらい押してでも、頑張ってレモンを絞る価値があります。

 

そうして出来上がったレモンカードは、とろんとした、ちょっと眠たげな黄色をしています。お味の方は、カスタードクリームからミルク風味を引いて、レモン風味を足したような味です。

我が家で育ったレモンだと思うと、更に美味しく感じるのですからゲンキンなものです。よく味わって大事に頂きたいと思います。