クリスマスマーケットが終わり、おととい、お店の片づけをしました。
作業を終え、かじかんだ手をすり合わせる私たちに、なんとサプライズが待っていました。
「六本木ヒルズからのクリスマスプレゼント」ということで、展望台・美術館・スカイデッキへの共通入場券を頂いたのです。
作業が思ったより早く終わったこともあり、早速みんなで展望台へ。
午後4時過ぎ。
53階にある展望台はまだ明るく、東京タワーもスカイツリーも見えます。
手持ちのカメラを渡すと無料で写真を撮ってくれるサービスがありました。係の女性は、はしゃぐ観光客を、笑顔でさばき、てきぱきと誘導して撮影しています。
私たちも撮ってもらうことにしました。
掛け声は、おきまりの「はい、チーズ!」ではありません。カメラを構え、自分までにっこり笑ってお姉さんは言います。
「ハイ、行きますよー。スカ―イ、ショット!!」
冬至は過ぎたとはいえ、日が暮れるのはまだまだ早い。見る間に景色は西日に照らされた夕暮れになり、残照が徐々に薄れると、街の光が浮かびあがってきます。人々が帰宅し、マンションが丸ごと明るくなります。向こうに行く車の赤いランプと、こちらに来る車の黄色いランプがどこまでもだらだらと続く車の渋滞が見えます。
スカイデッキにも行ってみました。屋上階についたエレベーターが開いた途端、風がひゅうっと通り抜けて思わず首をすくめました。さ、寒い!
ひさしぶりに、透き通ってガラスのように硬質になった真冬の空気を感じました。風はびゅうびゅう吹いて、私の体から削るように熱をさらっていきます。
でも展望台でガラス越しにみるのとは、迫力が違います。頭上に空が広がっているせいもあるのでしょうか、いま自分はここに立ち、夜景を眼下に見下ろしているのだという実感が湧きあがってきます。
夜の闇に砕いたガラスをちりばめたような光の粒。たしかに、きれい。でも、すこし冷たいひかり。たぶん、本来人間が美しいとは思わなかった方向の、ひかり。
また、この無数の明かりの下にどれほどの人間がいるのかと考えると、空恐ろしい気もします。やはり、人間は大地を喰らいすぎている。この美しさも、追い求めるべきでない美しさだったかもしれない…と、ついひとりで深刻になってしまいます。
頭を振って今それを考えるのをやめ、他の議題を探しました。
そして次の命題:この光の洪水の中で、夜の闇に住まう者たちの居場所があるのかどうか。
水木しげる氏に言われるまでもなく、この都会には妖怪は住みづらいことでしょう。でもどんなに科学が進み、時代が新しくなっても、妖怪めいたものや都市伝説の怪異が生まれ続けているのだから、こういった夜の者たちは数が減りはすれど、絶滅はしないのだろうと思います。きっと人間には、こういった者たちの存在が必要なのでしょうね。
江戸が開かれるまでは、はていったい、どんなもののけたちが闊歩していたのか。そのなかで、今でも残っているものはどれほどいるのか。
…そんなことをつらつらと考えていたら、小野不由美『東京異聞』に出てくる人形浄瑠璃の人形遣いが思い浮かびました。現代のこの大都市のどこか、闇が吹きだまったような路地裏に潜み、黒衣のむこうからにぃっと嗤ってこちらを見ている……。
違う寒さが背筋を走りました。
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