イギリスの旅 2

フォート・ウィリアムのバス停に折りたたみ傘を忘れる、という大失態。小雨が日に何度も降るので、雨具は必携なのに…。コンパクトだし柄も古風で気に入っていた傘だったので、ちょっと落ち込みましたが、“きっとあの傘は、こじんまりしたフォート・ウィリアムの街が気に入って、もう少しここに留まりたくなったのだろう”と思うことにしました。

お名残惜しいが、水色の傘よ……堅固でな。

 

バスでネス湖の横を通り、インバネスへ向かいます。ネス湖はネッシーで有名ですが、ネス湖がスコットランドにあることはあまり知られていない気がします。

ネス湖は川のように細長く延々と続いていました。夏の晴れた日には群青色に見えたと言う水面も、どんよりとした空の下では灰色か黒に見えました。それでも波がほとんどなく、鏡のように光っている湖は、綺麗と言うよりはうすら寒くなるようでした。ここなら何がいてもおかしくないかもしれません。周りの森も黒く、少し分け入れば一角獣やグリフォンに出くわしそうな静けさです。

 

インバネスの街には、ネス川が流れています。厚木に住んでいた時もそう思っていましたが、川がある街が好きです。川のある街は時間も空間も、縦でなく横方向に流れているように感じられ、無意識に緊張していた心がほぐれるように感じます。水の流れは、一日見ていたって飽きません。

特にネス川は土手が低く、水がとても地面に近い高さで流れているので、ゆったりした流れが目に心地よく映ります。

ホテルは川沿いにありました。部屋の出窓から外をのぞいて、川が目の前に見えた時、いっぺんにこのホテルが好きになりました。屋根裏の様な中二階の部屋で、そんな広くもないけれど、この景色がついているならそれが何だろう!と思いました。

 

翌朝は快晴で、昨日からずっと黒かったネス川の水が、初めて青く見えました。